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パッティングコーチと掴んだ5年ぶり勝利 平均パット1位の河本結はグリーンによってアドレスを変えていた!

パッティング技術の成長が優勝につながった(撮影:鈴木祥)

前週の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で5年ぶりとなるツアー2勝目を挙げた河本結。優勝会見では「これだけやっていれば優勝するよね、という感じでした」と話した。その言葉の通り、今シーズンは21試合に出場して、トップ10の回数はツアー1位の13回と、いつ勝ってもおかしくないほど好調なシーズンを送っていた。

昨年のスタッツと比較して、驚異的な成長をみせているのがパッティングだ。現在スイングコーチはつけていないが、3年前から日本では数少ないパッティングコーチ、橋本真和氏の指導を受けている。現在、河本のパーオンホールの平均パット数は『1.7350』で1位。昨年は『1.8263』で60位だった。

橋本コーチのもとで、まずはパッティングのメカニズムを理解することから始めた。「カットに振って右に打ち出しているとか、フェースのどこに当たってこうなっているのかとか、コーチはミスの原因を教えてくれるので、めっちゃ頭がスッキリしました」と河本は話す。

シーズン中も橋本コーチのスタジオを訪れ、『クインテック』や『キャプト』といった計測器を使い、フェースの向き、ヘッドの軌道、ボールの打ち出し角、スピン量、タッチのチェックを定期的に行う。それがストロークの安定感につながっている。

それだけではない。河本は橋本コーチのアドバイスでグリーンの芝質によってアドレスを変えているという。「地面の硬さと芝の長さと天候、水分量を含めて彼女は感じられるようになっている。河本プロの場合はアドレスを少し変えて、そのグリーンに適した動きができるようにしました」(橋本)。

橋本コーチによれば、地面の悪い影響を受けずに転がっていく理想的な打ち出し角は1~1.5度。その範囲内で、例えばコーライグリーンなら右足体重で打ち出し角を上げたり、メジャーの速いグリーンなら少し左に体重をかけて打ち出し角を低くする。河本が「これだけやっていれば優勝する」というのもうなずける。

また、パッティングをデータで見ていく作業は、メンタルにも好影響をもたらした。「距離と傾斜のパーセンテージによって入る確率があって、傾斜3%の下り2メートルは10球打っても2球しか入らない。そう思うと打ちやすいし、切り替えやすい」と河本。短くても入らない距離だと思えば気楽に打てるし、外してもショックは少ない。

河本のパッティングが優れていることが分かる面白い数字がある。トップスピン量だ。ボールのコロがりは、順回転をかけるトップスピン、垂直方向の軸に対して右や左に回るサイドスピン、拳銃の弾のように進行方向の軸に対して回るライフルスピンの3つで作られる。「トップ選手であるほど、打った瞬間から順回転。ボール初速が遅くても最後までスーッとコロがっていきます」と橋本コーチは話す。

プロテスト合格を目指す竹内美来は、橋本コーチに習って1年。彼女のスピン量を測定すると、トップスピンが48%、サイドスピンが46%、ライフルスピンが6%。約半分が横の回転だった。「この状態で地面にボールが接触すると、傾きが変わって方向転換してしまいます。サイドスピンはトップスピンの4分の1くらいが理想です」。それに対して河本のトップスピンは74%、サイドスピンは15%、ライフルスピンは11%。サイドスピン量は橋本コーチが理想とする4分の1よりも低い5分の1の数字となっている。

決して竹内のパッティングが下手なわけではない。河本がすごいのだ。その証拠に、橋本コーチのスタジオに訪れた一般ゴルファーの数字を見ると、トップスピンが16%、サイドスピンが74%、ライフルスピンが10%だった。中継を見ているだけでは分からないが、それだけプロとアマチュアの技術には差がある。

「ボールの転がりがある程度一定であること。河本プロはこれを突き詰めていって、『6メートルくらいは入る』って思えるようになってきた。ズレない自信がある」と橋本コーチ。2人が取り組んできたことが平均パット1位、そして優勝につながったのは間違いない。そんなツアー屈指のパッティング技術を手に入れた河本だが、さらなる上を目指している。

「今、コーチと目指しているのは平均パット数1.6台。男子ではいるけど女子ではいない。そこを目指しています。ライン読みの技術と打つ技術があれば、実現できると思っています」。河本の平均パットは現在『1.7350』で女子ツアーでは1位だが、男子ツアーでは10位の数字。男子の平均パット1位は清水大成の『1.6862』となっている。大会最終日はバーディパットが一度も決まらなかったが、今週からまた安定感抜群のパッティングを武器にバーディを量産することだろう。

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