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杉浦悠太が記録ずくめのプロ初優勝 蝉川泰果との激闘を制し「ずっと緊張していました」

ルーキーの杉浦悠太が日本プロで快挙を成し遂げた(撮影:上山敬太)

<日本プロゴルフ選手権 最終日◇7日◇富士カントリー可児クラブ 志野コース(岐阜県)◇7164ヤード・パー71、7201ヤード・パー72>

杉浦悠太がプロ転向後12試合目という史上最短記録で“プロ日本一”の称号を手にした。詳細なデータの残る1985年以降では5人目となる大会初出場で優勝。日本人としては2009年の池田勇太以来2人目で、まさに記録ずくめの勝利であった。

灼熱の岐阜決戦。多くのギャラリーが見守るなか、2位の蝉川泰果に2打差をつけてスタートした。だが、決して楽な道のりではなかった。蝉川は1番でボギーとするも、2番から連続バーディを奪いプレッシャーをかける。杉浦も2番をバーディとして応戦すると、その後は両者2つのボギーを叩き、2打差のままで折り返した。

そんななか、9番では大きなピンチもあった。ティショットを左崖のラフまで落とすと、木がスタイミーで2打目は隣の5番ホールのフェアウェイに出すだけだった。そこからの林越えのショットがグリーンを捕らえるスーパーショット。ギャラリーの歓声も沸いた。2パットを要したが、「いいボギーだった」とダメージを最小限に抑えた。

バックナインに入ると、蝉川が10番をバーディとして1打差に縮める。12番はともにバーディ。緊迫した時間が続いたが、16番で蝉川が痛恨のボギーを喫した。ここで勝負ありと思われたが、2打リードで迎えた18番で試練が訪れる。

アゴの高いフェアウェイバンカーに捕まってしまった。グリーンは狙えないと判断してレイアップをするも右のラフへ。約80ヤードの3打目はグリーンを捕らえるも、傾斜で花道にこぼれてしまった。対して蝉川はバーディチャンス。「プレーオフは覚悟していました。状況としてはピンチでした」。ダブルボギーになってしまいそうな難しい状況でも、冷静に判断。4打目はウェッジではなくパターを選択し、これをきっちり寄せて2パットのボギー。蝉川はパーとして、杉浦に軍配が上がった。

「お互い上手くいってなかったですが、『もう追いつかれるな』と思う場面は何度もありました」。メジャーでは22年「日本オープン」3日目にも蝉川と回っており、「この人には勝てない」とアマチュア優勝を達成した蝉川のプレーに力の差を見せつけられた。だからこそ、“怖さ”は身をもって知っている。「ずっと緊張していました」と気を抜く時間は一切なかった。「そんな選手に2日間競り勝って優勝できたことは良かったです」と、価値ある優勝を手にすることができた。

愛知出身の杉浦にとって、岐阜は“準地元”。多くのファンが駆けつけてくれたこともうれしい。「愛知から応援に来てくださる人がたくさんいらっしゃった。きょうのように苦しい状況でも『悠太ならいけるぞ!』、『ナイスバーディー!』など声をかけてくれた。一人じゃないな、という気持ちになりました」。クールな杉浦から笑顔がこぼれた。

「メジャー優勝が大きな目標。こうしてメジャータイトルを獲得できた。どこへいってもたくさんのギャラリーが応援に来てくれるような、人気のあるプロゴルファーになりたいです」と青写真を描く。この優勝で5年間のシードも獲得。「海外に行きたいと思っているので複数年シードはうれしい」。プロ日本一となった今、目指す先は世界一だ。(文・齊藤啓介)

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