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プロスポーツ界が「高単価×高付加価値」にチャレンジすべき理由。ブランドマーケター・みる兄さんの提言

マーケティング界隈でコアな人気を誇る『みる兄さん』の連載コラム。第2回のテーマは「プロスポーツクラブが入場収入を増加させるためには?」についてです。

国内のプロスポーツの収益において、大きな割合を占める入場収入。しかしスタジアムもアリーナも最大収容人数は決まっており、今以上に大きな収益を生み出すことは難しいです。

そこでみる兄さんが目をつけたのが「高付加価値・高単価な入場収入への取り組み」です。ヴィッセル神戸らの事例をもとに国内のプロスポーツチームが取り組むべき施策の例を考えました。

■クレジット
文=みる兄さん

■目次
プロスポーツクラブの収益構造
入場収入を因数分解
「高付加価値・高単価」な入場収入への取り組み
終わりに
参考資料

プロスポーツクラブの収益構造

プロスポーツクラブの収益構造をご存じでしょうか? 営業収益の内訳は、入場収入/スポンサー収入/物販収入/放映権収入と大きく4つに分かれており、それぞれのスポーツで営業収益の割合は異なっています。

今回は国内のJ1リーグ、Bリーグ、海外のプレミアリーグ、MLBで、クラブ平均値を算出しておおよその内訳を計算しました。(コロナ禍の影響を受けていない2019年実績)

J1リーグ/Bリーグ/プレミアリーグ/MLB

引用:Jリーグマネジメントカップ2020
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-and-industrial-products/articles/sb/j-league-management-cup.html|Deloitte|2022年1月4日

引用:Bリーグマネジメントカップ2020
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-and-industrial-products/articles/sb/b-league-management-cup.html|Deloitte|2022年1月4日

引用:Annual Review of Football Finance 2019
https://www2.deloitte.com/global/en/pages/about-deloitte/articles/annual-review-of-football-finance.html|Deloitte|2022年1月4日

引用:Despite Lockdown, MLB Teams Gain Value In 2020
https://www.forbes.com/sites/mikeozanian/2020/04/09/despite-lockdown-mlb-teams-gain-value-in-2020/?sh=746a1f212010|Forbes|2022年1月4日

それぞれのクラブの平均営業収益は、J1リーグ約49億円/B1リーグ約9億円/プレミアリーグ約328億円/MLB約424億円。

これらのデータを比較すると、日本国内のプロスポーツクラブと欧米のプロスポーツクラブの営業収益規模の違いに驚きます。

特に大きく異なるのが放映権収入(JリーグとBリーグはリーグ配分金)ですが、これに関する考察はまた機会がある際に深掘りするとして、今回の記事では、営業収益のなかでもサポーターにとってより身近な、“入場収入”に焦点を当て、「プロスポーツクラブが入場収入を増加させるためには?」をテーマについて考察していきたいと思います。

入場収入を因数分解

まず、入場収入=ホーム開催試合のチケット販売数として分解してみます。

入場収入客数(チケット購入数)×購入単価(チケット価格)×購入回数(ホーム開催試合数)

プロスポーツクラブは売上を分解した要素の内、2つの制約を考えなければなりません。それがスタジアム/アリーナの収容人数年間のホーム開催試合数です。

私が収容人数と年間のホーム開催試合数に興味を持ったのは、数年前にスポーツバーでアメリカンフットボール(NFL)の試合を、テレビでたまたま見ていた時の会話がきっかけでした。目の前で繰り広げられる激しい選手同士のぶつかり合いをみて、詳しい友人に聞きました。

私「アメフトって、選手の負荷が高そうだけど年間に何試合ぐらいやるの?」
友人「カテゴリーにもよるけど年間16試合くらいかな」
私「それだとホームは半分の8試合プロ野球の約10分の1、Jリーグの4分の1くらいか…メチャ開催試合数が少ないね」

と衝撃を受けたころから、スポーツは競技によって入場収入の最大値が全然違うことに気づきました。

そこで競技によって異なる入場収入のトップライン(最大値)の概要を算出してみます。

Jリーグ(サッカー)/Bリーグ(バスケ)/プロ野球/プレミアリーグ/MLB/NFL

今回はスタジアムの満席率は加味せず、入場収益の市場規模(収容人数×ホーム開催試合数)という観点で算出しています。(参考:各スタジアムオフィシャルHPなど)

J1リ―グ
J1クラブのスタジアム平均座席数は約3万2000人。年間のホーム試合数は約25試合
J1クラブの入場収益における客数×試合数の限界値は

32,000人×25試合=80万席

Bリーグ
Bリーグクラブのアリーナ平均座席数は約5,000人。年間のホーム試合数は30試合
Bリーグクラブの入場収益における客数×試合数の限界値は

5,000人×30試合=15万6,000席

NPB(プロ野球)
NPBのスタジアム平均収容人数は約3万7000人。年間の試合数は平常時143試合でその内ホームの試合が72試合

NPBの入場収益における客数×試合数の限界値は

37,000人×72試合=262万7,000席

プレミアリ―グ
プレミアのスタジアム平均座席数は約4万4000人。年間のホーム試合数は約30試合
プレミアの入場収益における客数×試合数の限界値は

44,000人×30試合=132万席

MLB(メジャーリーグ)
MLBのスタジアム平均座席数は4万2000人。年間のホーム試合数は81試合
MLBクラブの入場収益における客数×試合数の限界値は

42,000人×81試合=340万2,000席

NFL(アメリカンフットボール)
NFLのスタジアム平均座席数は7万1000人。年間のホーム試合数は8試合

NFLクラブの入場収益における客数×試合数の限界値は

71,000人×8試合=56万8,000席

スポーツの種類によってこれだけ販売できる数量(座席数)に違いがあることがわかります。特にプロ野球とMLBが突出しています。

各プロスポーツクラブの入場収入を増加させるためには? の課題をマーケティング担当として課せられたなら、多くの人は「いかにスタジアムを満員にするか?」と、スタジアムの集客率高めることを考えるのではないでしょうか。

J1リーグの集客率は平均すると59.3%(2019年)、Bリーグは58.1%(2019年)。一方、プレミアリーグ96%(2019年)となっています。日本国内のプロスポーツクラブは、スタジアム/アリーナの集客率をプレミアリーグのように高める施策に取り組む必要はあります。

しかし、スポーツ好きなマーケティング従事者としては、誰しもが考える「客数」だけでなく、「単価」に着目することで別の角度からもプロスポーツクラブの入場収益を向上させることができるのでは? と感じました。

チケットの販売単価の話をすると、私も含めたクラブのサポーターが「チケット販売価格を値上げするの?」との会話になりがちです。しかし、チケットの販売単価の平均値を高めていくのは困難です。

なお、J1リーグの入場収入の販売単価の平均価格は、コロナ前の2019年で昨対―3.1%で2,344円と微減しています。「単価」と「客数」は負の相関関係を持っていて、提供価値(売り物)をかえなければ販売単価を上げると購入客数は下がってしまいます

元USJのCMOとして著名な森岡毅氏も書籍で以下のように書いています。

“マーケティングでは、1%の値上げに対して、何%売上が減少するかという反応度を分析し、それを「価格弾力性」と呼んでいます。

ちょっとの値上げでガーンと売上が下がる状態を「価格弾力性が大きい」、その逆を「価格弾力性が小さい」と表現します。

価格弾力性が小さい状態だとマーケターは値上げを実行しやすくなります。ちなみに、テーマパークは買わなくてもすぐには誰も死なない商材ですから、価格弾力性は比較的大きい業態と言えます。

プライシングで大切なのは、値段を最終的に決めているのは市場であり、消費者であるという認識です。「値上げ」には大きなリスクが伴います”

引用:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門|角川書店

プロスポーツのスタジアム観戦もテーマパークと同様に“買わなくても誰も死なない商材”なので、価格弾力性が比較的大きい業態と言えます。

そこで、チケットの販売単価の平均価格を高めるのではなく、ニッチな付加価値を高め、「単価の上限」にチャレンジする取り組みを調べてみました。

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