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“所属しない”働き方。安部未知子が改革する、市民クラブの経営戦略

経営者にいいクラブをつくってもらいたい

私は幼い時からずっとサッカーが好きで、大学までサッカーを続け、仕事もサッカーの現場を選びました。「サッカー界に貢献したい」、もっとダイレクトに言うなら「経営者にいいクラブをつくってほしい」。そのために、サッカーが儲かる仕組みを生み出していくことが私の役割です。「スポーツで世の中を良くしたい」という想いを強くもつ経営者と接していると、その役割を一層意識します。

最近はビッグネームの企業がJリーグチームのスポンサーになったり、資金力を生かして海外のスター選手を獲得することがよくニュースになっています。ですがより目を向けていきたいのは、小さなクラブがどう生き残るかという点。下部リーグに所属し、有名選手もいないけれど、地元に愛されるクラブをつくることで地域に貢献したいと考えている経営者はたくさんいます。一般企業のなかにも、多額の支援は難しいけれど、スポーツと結びついて何かをしたいと考えているところも多い。その両者を結び付けるために、様々な協業の形を模索し、スポーツへの参入障壁を下げることが必要だと思います。

ある意味私の働き方自体がそれを体現しているのかもしれません。クラブ側からすれば、正社員として雇用の担保はせずに、私が出した利益の中から何%かを給料として支払えばいいので、収支は圧迫しない。私は子どももいて頻繁にはクラブハウスに顔を出せないものの、その分新たなビジネスを生み出し、サッカークラブに貢献できる。双方に無理のないスキームが組めていますよね。

ビジネスなのでやはり利益の話が多くなってしまいますが、それはあくまで両者を結び付ける要素の一つでしかないと考えています。単純な営利目的ではなく、同じ想いを持つパートナーという関係性が理想です。そのパートナーシップをできる限り長く続けるために必要なものが利益かなと。そう考える私の根本には、サッカー選手時代に感じていた「一致団結」へのこだわりがあります。

大学サッカーって、レギュラ—選手、ベンチ、メンバー外の応援団、プロになりたい人、そうでない人、とモチベーションがバラバラなんです。でも色々なモチベーションの選手たちが目指すのは、目の前の勝利ただ一つ。クラブチームも企業も、立場は違えど「地元を盛り上げたい」という目的は同じ。ならば、その目的を達成するために、一致団結できるはずだし、そうしやすい環境をつくるのが私の役目かなと。同じことをママ友同士の間でもやってしまうんですよね。「子どもたちのために、親が力を合わせなあかんやろ!」って(笑)。

最初は驚かれますけど、言い続けていると共感してくれる人が増えてくる。ビジネスも同じだと思いますが、やはり自社の利益に目が向きがちで一筋縄ではいかないときもある。そんなとき、クラブと企業のどちらの人間でもない私だからこそ「一致団結」を生み出せるのではないかと思います。

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