FC東京&横浜DeNAベイスターズの「史上最多」を更新するデータ戦略

違いは「試合以外」の過ごし方

今回のパネルディスカッションで両者の違いが最も明確に生まれたのは、スタジアムでの“過ごし方”にあった。

横浜DeNAベイスターズは、仕事が終わってから飲みに出たり、休日もアウトドアに動き回る20代後半〜30代のサラリーマン層を“アクティブサラリーマン”と命名し、重要なターゲットにしている。しかし、FC東京の川崎氏は「野球はアクティブサラリーマンの方々が、平日のナイターを飲み会に近い感覚で“たまに野球を見る”ということを楽しんでいます。でも、サッカーは難しいと思っています。基本的にずっとサッカーを見なくてはいけないので、”飲み会の感覚でサッカーを見る”という考えにはならないと思いますね」と正直な悩みを明かした。

横浜DeNAベイスターズは、横浜スタジアムをグループ会社化したことによって、飲食物の収入もグループ内に入っていく仕組みを持つ。しかし、FC東京はスタジアムを所有していないため、飲食物の売り上げがクラブに還元される割合は多くない。そういった点には競技の性質以上に大きな違いがあるようだ。

一方、FC東京では独自の施策として、スポンサーの協力のもと「青赤パーク」と呼ばれるテーマパークを開設。スタジアム横の広場を使って、試合前後や試合中でも子どもが遊べるエリアを設けた。

同施策の効果は定量的にはまだ未知数であるものの、試合を重ねるごとにその満足度は向上中で、川崎氏も手応えを感じている。2020シーズン以降は「青赤パークを経験した子どもたちが、青赤パークに行っていない人と比べてどれだけ再来訪率が上がるのかを計測していきたいです」(川崎氏)と目標を定めた。

スポーツデータ領域は今が旬

モデレーターの杉本氏は最後に、「川崎さんはこれまで色々なクラブを経験され、過去に所属していた名古屋グランパスでも成長して、現在のFC東京もグイグイ伸ばしています。選手獲得以外でこういった方が動いて、クラブが強くなっていく方針は、とても良い傾向だと思いました」とJリーグの職員としてコメント。

その上で、横浜DeNAベイスターズについては「もはやMLBにも負けていないです。戦略を比べても一緒のレベルだし、これからの施策にうまくデータが噛み合っていくと『横浜DeNAベイスターズはどこまで行ってしまうのかな』と思います」と取り組みを評価した。

最後に、杉本氏は「スポーツではデータの分野が一番ホットになっていて、今後数年が面白い。私はファン化のプロセスは数年のうちに解決すると思っていて、これにはデータの力がとても重要になります。なので、それをぶん回せる力技を持つ人が必要ですし、飛び込むには面白い時期です。チャンスがあれば是非飛び込んでいただきたいと思います」と会場へ投げかけ、議論を締めくくった。

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