グランパスくんが売れっ子になるまで。マスコットビジネス成功秘話

マスコットファンがクラブを支える

ーマスコットを持ちながらも活用方法に悩むクラブも多いようですが、名古屋グランパス流の成功の秘訣はあるのでしょうか。

佐藤:当初担当者の間では、やるからにはビジネスとして成り立たせていかないといけないという認識をまず浸透させました。目に見える結果に結びつけ、存在意義を全社にも理解してもらおうと努めていましたね。

大内田:実際、人気が上がるにつれてグッズの売り上げももちろんですが、「グランパスくんと一緒に何かできないか」と考えてくださる自治体の皆さんや企業さんが増えてきたので、手ごたえも感じています。

佐藤:社内の協力体制も変わってきましたね。マスコットの企画会議って、真面目にやっていても遊んでいるような会話になってしまうんですよ(笑)。理解がないと、何となく社内からの目線が冷たいというか、「仕事しろよ」と思われてしまうのが、各クラブのマスコット担当者の悩みなんじゃないかと思っています。その壁をまず超えるためにも、成果を出すことは大事ですね。

ーマスコット関連の売り上げの目標数値などは設定したのでしょうか?

佐藤:グッズ担当など各自の目標はありますが、ここでは控えさせていただきます。それでもやはり、イベントに呼んでもらう回数や、コラボしたいという企業さんからのお問い合わせが目に見えて増えていますので、グランパスくんの魅力を再認識しています。

また、「グランパスくんだ」って言ってもらえる回数が増えるとか、ホームタウンへの浸透の部分を捉えるようにしています。

地域に愛されているマスコットというのが大前提にないと、パートナー様に貢献できませんので、営業パートナー様の売り上げにもつながりません。どちらもバランスよく見ていくことが必要だと感じています。

佐藤:各学校への挨拶活動にグランパスくんが参加するという取り組みを教育委員会を通じて行っているのですが、その回数も増えていますよね。子どもたちの日常の中にグランパスくんが溶け込んでいくことで、地域に根差したクラブになっていけると思うので。

(※グランパスくんファミリーは2019年、愛知県内の小学校49校の挨拶活動に参加した。)

大内田:マスコットファン方も増えてきたと感じています。グランパスくんのイベントをやると必ず来てくれる方がおられます。試合前後に外に出ていくと、人垣の大きさが以前と比べて明らかに違うんです。ここ5年くらいでそういった変化も起きてきました。

佐藤:クラブが持つ一番の“コンテンツ”は試合や選手ではありますが、そこには勝敗や移籍というリスクもある。でもマスコットは不変なんです。クラブの状況がどうなろうと、グランパスくんファミリーはずっと存在してくれるので、そこについてくれるファンの方はすごく大事です。マスコットを好きになってくれる人は、クラブそのものを好きになってくれる人だと思うんですよ。強くても弱くても、選手が移籍してもずっとクラブを応援してくれるファンにつながると思います。

ークラブにおけるマスコットの存在意義はかなり大きいのですね。今年の総選挙における3連覇ももちろんあるかと思いますが、今後の展開や目標などを教えていただきたいです。

大内田:グランパスくんと企業様とのコラボ商品が、地域のスーパーに並ぶくらい、ホームタウンの皆さまに愛される存在になってほしいですね。

佐藤:ドアラの商品はすでに棚を取っていますからね。Jリーグのマスコット総選挙で連覇をしても叶わないライバルが同じ地域にいるというのが刺激になります。だからドアラのように、グランパスくんもディナーショーをやってみたいんですよ。喋らないマスコットのディナーショーでチケットが完売したら人気は本物だと思うので(笑)それくらいグランパスくんファミリーが好きという人を増やしていき、少しでもドアラの域に近づきたいですね。

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