カレン・ロバートが木更津で示す、サッカークラブの存在意義

地域を“助けられる”クラブに

ークラブを作っていく上で最も大切にしていることを教えてください。

先ほども話に上がりましたが、地域密着です。

ひとつは、いざという非常時に地域を助けられる存在になることです。2019年に台風19号で被災した際、チーム内でも停電や物資不足で困っている人がたくさんいました。クラブが彼らを助けることができましたし、彼らから情報を得て助けを求めている地域に物資を運ぶことができました。

「何かできることはないか」と他県のサッカークラブから連絡が来ることもありました。クラブが拠点となって、支援物資を受け入れて地域の方々に提供しました。サッカー界は狭い分、横のつながりが強く信頼関係ができているので、そこを災害時に活かしていければと思います。

ただサッカーをするだけではなく、地域が求めていることを把握して、スポーツクラブとしてできることを地域に恩返ししていきたいですね。そして、それは災害に限らず、経済面でも同じことが言えます。

ー経済面、というと。

もし木更津市が雇用に困っているのなら、クラブが認知度の高い選手を呼んで、とにかくこの地域について発信してもらう。そうすれば人が来てくれて、経済の安定につながるのではないかと。「地域のお祭りを発信してほしい」など、地域がクラブに求めていることを受け取って、お返ししていくことが大切です。

とはいえ、木更津ではまだまだサッカーの人気は高いとはいえません。木更津市内にはサッカーグラウンドがほとんどないんです。特にJリーグと親しみが薄い40代後半や、それより上の世代では、ゴルフや野球のほうが人気のようです。

その中で地域の人から受け入れられていく必要がありますね。

そうですね。例えば県内にローヴァーズ仕様の自販機を置いたりと、まずは千葉県の方々にクラブのことを知ってもらうことに力を入れています。

ーふるさと納税のお礼の品にユニフォームを出す、といった取り組みもされています。

とにかく地域に入り込もうと(笑)。まだ「ローヴァーズと言えば木更津」とはならなくて、「ローヴァーズと言えばカレン・ロバート」で終わってしまいます。僕の名前が出てこないくらい、地域のシンボルとしてクラブの存在価値を高めたいですね。

もともとは地元の行政にもほとんど知られていませんでした。それが、2019年1月でのある動きをきっかけに、木更津の皆さんから徐々に応援されるようになったんです。クラブの名前に地名を入れて、「房総ローヴァーズ木更津FC」に変更しました。ここから「Jリーグに向けて頑張ってね」と応援されることが増えました。

ー廃校の再利用先にも選ばれていますよね。

サッカーグラウンドが欲しいなと思っていたタイミングで、たまたま募集があることを知りました。私はその時イギリスにいたので、副代表がプレゼンをして、勝ち取ってくれました。

校舎、体育館、グランドを使えるようになり、中学校の跡地を2.5億かけて改修します。校舎を宿泊施設、グランドを人工芝に整備、体育館を緊急事態避難場所にするため冷風機、ヒーターを入れる予定です。

木更津にローヴァーズを根付かせて、将来的にはスタジアム建設に繋げられればと思います。どういった計画になるかはまだ決まっていませんが、まずはここを拠点に、木更津市民の方々にサッカーの可能性を理解していただけるようにしたいです

〜中郷中学校跡地活用に関する貸付契約〜

木更津市のウェブサイトでも事業の概要や将来イメージ図が公表されました。

木更津市HP

ここまでサポートしてくださった木更津市役所の皆さま、
本当にありがとうございます。

責任を持って事業に取り組んでまいります。 pic.twitter.com/m8gJHS8adE

— 房総ローヴァーズ木更津FC (@RoversKisarazu) March 4, 2020

現役選手×営業。一人二役での経営

今のカレンさんの具体的な業務を教えてください。

スポンサー営業をしながら、トップチームの選手としても活動しています。あとはアカデミー、トップチームのスカウト、交渉やイベント企画、参加などになります。

ー営業も自らされているんですね。

そうなんです。千葉県内をグルグル回っています(笑)。だからクラブのSNSにも、私はよく登場しています。トップがやったほうがスピード感を持ってできるので、今は私がやっています。もちろん仕事量は多いですが、やりがいはあります。

市役所などの行政施設や、地域のイベントにも積極的に顔を出しています。目的は、地元の方々と交流して情報を得ることと、会社にとってプラスとなる新しい出会いを探すことです。こうやって足を運ぶことが、少しずつ地域のスポーツ文化の形成へとつながっていくと感じています。現に地元での交流をきっかけに、フットサル場の拠点を増やすことができています。

【ローヴァーズ自販機第7号機】
第7号機は、千葉市にあります京葉エナジー本社前に設置頂きました!

【地球のために働く会社】
完全リサイクル・再資源化の取組みで、地球環境保護の重要な役割を担っている会社です。

京葉エナジーさん、設置頂きありがとうございます!! pic.twitter.com/4Hc6nt5f8I

— 房総ローヴァーズ木更津FC (@RoversKisarazu) February 14, 2020

ー経営のノウハウは、どこから得ているのでしょうか。

わからないです(笑)。ネットでフットサル場のビジネスについて調べたり、地元で経営している店長に聞いてみたりと、手探りです。地域によってお客さんが求めているものが全然違うんです。そこを把握して、木更津のニーズに応えられる場所にしていきたいです。

まだ駆け出しですが、やりたいことは早めに実現するようにしています。ジュニア・ジュニアユース・ユース・トップといったカテゴリーを全て揃えたり、良い選手を発掘するためにも2018年に県内2施設目となるフットサル場を開設しました。

ー今後10年の計画を教えてください。

2019年から12年計画で動いています。まずはJ3を目指して、トップチームの強化をしつつ、アカデミーからトップチームへと選手を育成していくことを考えています。

今シーズンは、とにかく関東2部リーグへの昇格。関東2部に昇格すれば、試合がホーム戦とアウェー戦に分かれます。その辺りから入場料をとって、“観戦”ができる仕組みを作って、ローヴァーズを木更津に根付かせていきたいですね。

カレン・ロバート氏

関連記事