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横浜FCは、コロナにどう立ち向かったのか? 松本雄一×みる兄さん【前編】

ノンフットボールの部分をどう展開するか

—本題に入ります。コロナ禍の2020年、横浜FCさんはどのような取り組みをされていましたか?

松本 いろいろ考えた結果、「ノンフットボールの部分をどう展開するか」でしたね。新しいプロダクトを作る、デジタル投げ銭、クラウドファンディングなども視野に入れて。デジタルの取り組みは、「とにかくまず始める」というところから入りました。

—何が当たるかわからないし、とにかく打ち手を増やすと。

松本 そうですね、本当に何がどうなるか見えなかったので。DX(デジタルトランスフォーメーション)とか皆言ってますしとにかく新しいことは手を付けました。早めに取り組んで、どうだったかは後で判断しようと。

—「特にこれがうまくいった」というものはありますか?

松本 残念ながら、特別うまくいった!というものはないです。僕の結論は、やはり「現地のコンテンツに優るものはない」でした。

ただ、サポーターの皆さんから一定の反響を得られたものはありました。例えば4月1日、エイプリルフール企画として「嘘ではなく夢を語ろう」というテーマでこのようなnoteを書きました。

4月1日、こんな時だからこそ、ウソやジョークではなく目指している未来への「夢」を語り、希望や勇気を持ってこの難局をみんなで乗り越えましょう✨
みなさんも今日は自分の夢を考える日にしませんか。#yokohamafc #横浜FC #AprilDream #夢の日 #note@PRTIMES_JP

— 横浜FC【公式】 (@yokohama_fc) April 1, 2020

また、「横浜FCオリジナルビール開発プロジェクト」も喜んでいただけたのかなと思います。

Jリーグ再開後、みなさんと一緒に創っていく共創プロジェクトの第一弾✨横浜FCオリジナルビール開発プロジェクトです!
三ツ沢に来るのがもっと楽しみになる、横浜FCオリジナルビールを #横浜ビール 様と共同開発いたします✨#yokohamafc #横浜FC pic.twitter.com/YZIQr5nYGZ

— 横浜FC【公式】 (@yokohama_fc) April 4, 2020

正直「成果が出た」というものはないのですが、未来を語ることや明るい姿勢を見せることには取り組んでいました。ファンエンゲージメントを維持する意味で、こうした姿勢はとても大事だと思いましたね。

—思い起こせば、緊急事態宣言の前後ぐらいから強烈な自粛圧力が存在した気がしています。皆暗かったですよね、やはり。その中で、Jクラブが少しでも明るい姿勢を持つのは大事だと思います。

松本 ありがとうございます。あとは、フリ丸が横浜中華街にお邪魔して動画を撮って、中華街のお店で食事をするということもやりましたね。これは3月末、緊急事態宣言に入る直前のことですが。

僕らが存在する意義を考えたときに、外出自粛で街から人が消えるというニュースを見て、今地域の役に立つというのは例えばこういうことじゃないかと思ったんです。中華街はそれまで全く接点がなかったんですが、それでもいくつかのお店に直接連絡して行ってみました。

ただ、お伝えしたとおり新しいデジタル施策はこちらの力不足もあり、サポーターが置いてけぼりになる部分がどうしてもありました。これではスケールしないなと。

みる兄さん 難しいですよね。そもそもお客さんがリアルで投資するビジネスに、どうデジタルで親和性をもたせるか。

ブランドマーケティングとして見ると、例えばネット上のコンテンツを買うときはわかりやすいんですよね。その場で決済して、その場でサービスを享受できる。例えばスマホで読める漫画などのコンテンツに課金するケースです。

デジタルへの投資は無駄にはならないと思いますが、リアルが細っていく中でデジタルを太らせるのは本当に難しいなと。

松本 反省点は多いですね。クラウドファンディングやギフティング、オークションも始まって、どうしても売上に走ってしまったというか。経営危機になりかねない状況であるとはいえ。

一周回って、やるべきは地道でアナログな部分、ホームタウンに対して直接的にアプローチできる活動をし、それを間接的にデジタルで広めるといったことだったのかもなと思います。

横浜FCさんは、健全な形で事業を進めていると思います

えとみほさんの回ではDXやSNS活用についてお話を伺いましたが、あくまでそれは「リアルで、ローカルでJクラブが支持されている」前提にある施策でした。

みる兄さん 僕自身も、デジタル施策はすごく好きなんですけど。ローカルでリアルな部分をやったうえで、その体験がTwitter上で広がっていくという流れだと思います。デジタルで閉じているものをデジタル上で展開し、リアルな場でお金に変えるというのは相当に難しいですね。

そういう意味でいうと、横浜FCさんは充電式カイロであったりとプロダクトの開発を強化していると感じます。クラウドファンディングでなく受注生産型で、商品をちゃんと開発して、お客さんから売上を立てて、それがクラブの収益になる。そういうモデルを追求し続けていると思いました。

結局、ソーシャル上でも跳ねるのはそういうものですし、一番健全な形で事業を進めているのかなと拝見していて思いました。

松本 ありがとうございます。まさに仰るようなところで、コロナ禍になった4月の段階で、事業部全体で収益の「第四の柱」を一生懸命考えたんですね。4~5時間かけてウンウン頭をひねる中で、いろいろな意見が出ました。

「サポーターの方もクラブのためにといってお金を使おうとしてくれましたが、そこに頼るのは最終手段です。業績にも左右されるスポンサー獲得はアッパーに近く、ホームタウン活動も難しい中でどこに入り込むかといえば人々の日常。衣食住をマーケットとして考え、その中に入っていくにはどうしたらいいか?」

といったような。たとえば、企業コラボで日用品のブランドを展開してみたらどうかとか、農業で食を提供できないかとか、様々な意見交換をしました。

みる兄さん ファンの立場でいうと、シーズンシートを買うまで僕は「チケットを買ったりプロダクトを買うことが、クラブの強化費につながる」ということをそれほど意識したことがなかったんですね。

収益が改善すれば、クラブが強くなる可能性が高まる。無理をするわけでなく、日用品や充電器など普段遣いするものをクラブに寄せていくだけで強化につながる。「この購買は、クラブへの投資になるんじゃないか」と思ったときに、物を買うことに対しての感覚が「応援」に変わったんです。

スポーツチームとファン・サポーターの関係のあり方として、もちろん試合を見に行くのも応援の一つ。でもそれ以外にも、プロダクトを購入したり普段遣いのものを取り入れるだけでクラブの強化につながるんだ、ということを伝えていくのは大事かなと思いますね。

—規模が違う話ですが、バイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナに行ったときはグッズ売り場に溢れんばかりのグッズがあったんですね。歯磨き粉、タオル、洗顔フォーム、おむつからトイレットペーパーまで。小さな頃から、バイエルンが生活の一部になっている子がたくさんいる。

みる兄さん そうなんですよね。僕は小さい頃野球少年だったので、ベイスターズが全くお客さんが入らない頃から見てきました。グッズ売り場をいかに拡充しながら環境を整えるかは、すごく大事。中に人が入れるような、ショールーミングするようなグッズ売り場を作ることで明らかに購買意欲は変わってくるので。

松本 そうですね、ウチはそこをクリアするにはまず指定管理者になるしかないんですよね。現状、いまのグッズ売り場以外での展開は難しいんです。

みる兄さん そこはそうですよね、ベイスターズさんはそこがすごくうまかったなと思います。

松本 めちゃくちゃ、大きな課題の一つですね。

後編へ続く

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