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元Fリーグ&日本代表アジア覇者・佐藤亮“監督”が見た景色。大阪成蹊大を初優勝に導いた化学反応とは?【全日本大学コラム】

2022年8月、第18回全日本大学フットサル大会で初優勝に輝いた大阪成蹊大学。チームを頂点へと導いたのは、Fリーグでも活躍した元日本代表・佐藤亮監督だ。

シュライカー大阪時代、2016-2017シーズンに名古屋オーシャンズ以外で初めてFリーグを制覇したチームでキャプテンマークを巻いた。2014年のアジア選手権(現アジアカップ)では日本代表としてアジア制覇も経験した。現役時代からフットサル界の第一線を走ってきた佐藤監督は、指導者として大きな成果を挙げた。

大阪成蹊大で初めて「監督」に就いた彼は、選手たちにどのようなアプローチをしたのか。選手のモチベート、戦術的アプローチ、監督としてのチャレンジ、数奇な巡り合わせ、大会中止に泣いた卒業生の思い……さまざまな要素が複雑に絡み合い、辿り着いた栄冠。佐藤監督の功績は、後に続く指導者にとっても、勇気を与えるものかもしれない。

文・写真=河合拓

佐藤亮監督と選手の信頼関係

「落とすなよ! 絶対に落とすなよ!」

表彰式後に記念撮影が行われ、ひとしきりの歓喜の後、監督の胴上げが始まる直前に選手たちから冒頭の声が挙がった。

大阪や日本代表で活躍した現役時代とほとんど変わらない、細身の指揮官は、「おい!」と反応し、胴上げを拒否しようとする。だが、すぐに選手たちに取り囲まれてしまい、高く宙を三度舞って、最後は“しっかりと”床に落とされた。落下する直前には、もちろん数人の選手が衝撃を和らげようとしたが、それによってバランスが崩れ、結果として軽く肩を打った佐藤亮監督は、肩をさすりながらも笑顔だった。

監督と選手たちの関係が極めて良好であることは、この場面を見てもうかがえた。

これまで、大学選手権において大阪成蹊大は2016年大会、2017年大会で準優勝、2018年大会で3位と上位に入賞していたが、優勝には手が届かなかった。今回、初めて大学フットサル界の頂点に立てた要因として、佐藤監督を抜きに語ることはできない。

優勝を決めた後、選手たちも口々に、優勝の要因に「佐藤監督の存在」を挙げている。キャプテンの中村魁は、「頼りがいがあるというか。選手としてもすごい人でしたし、尊敬できるところもすごく大きいです。普段は優しいですが、厳しい時は、厳しいです」と、その指導スタイルを明かした。

「立ち向かわせる」モチベーション

大会初戦の相手は、初出場の東京大学フットサル部さんぱち先生。全国で最難関である関東予選を勝ち上がってきた相手に、鮮やかなセットプレーから先制点を許してしまったが、その後に5点を挙げて5-1の逆転勝利を収めている。その要因の一つには、「今大会で最注目のピヴォ」との前評判のあった城後大樹を抑え込めたことがあった。

佐藤監督はあえて城後にボールを入れさせて、フィクソの選手たちに勝負させた。

「そこの勝負かなと思っていました。20番の城後くん、21番の峰岸(剛基)くん。彼ら2人が仕事をしたら相手のリズムだし、そこをうちの橋本(澪良)、森本(碧)、今日でいえば吉迫(武隆)が止めれば、自分たちのリズムになるとは、試合前から言っていました。彼らもそういうモチベーションをもってやってくれたのかなと思います」

ピヴォの選手たちへのパスの供給源を断つこともできたが、そうしなかった理由については「迷ったんです。最初からハーフまで引くことも考えたのですが、この年代特有の“立ち向かわせることでのモチベーション”に期待して、そういう戦術にしました。期待に応えてくれたというか、自分の思った通りにプレーしてくれたので、全選手、本当にいいパフォーマンスをしてくれたと思います」と、説明している。

ほかにも、1-1の時には、GKの片岡浩太が攻め上がって豪快なシュートを決めた。「プレス回避の時とか、攻め上がることはよくあるんです。あそこまでいいシュートは見たことなかったのですが、関西リーグや学生リーグでも点を取っていて、そういうプロフィールを持っている選手です。試合の流れを変えた1点かなと思います」と、佐藤監督は選手の手柄であることを強調した。

だが、しっかりとGKを加えた攻撃を教えられる指導者は、まだ決して多くない。

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