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【2021大谷翔平の軌跡:5月】圧巻だったグリーンモンスター越えの一発。本拠地球場では「MVPコール」も<SLUGGER>

最高のスタートを切った4月に続き、5月も順調にホームランを量産。マウンドでも躍動した。(C)Getty Images
4月に引き続き、5月も大谷翔平は好調を維持した。11日には、勝ち星こそつかなかったものの強豪アストロズを相手にほぼ丸3年ぶりの2ケタ奪三振。14日のレッドソックス戦では、ベーブ・ルースも二刀流時代にプレーしたメジャー最古の球場フェンウェイ・パークで躍動した。レフトにそびえる高さ約11.3メートルのグリーンモンスター。2年ぶりに訪れた“聖地”で壁を越えた。

5回の第3打席、ニック・ピベッタのナックルカーブを捉えた打球はレフトへ。体勢を崩され、最後は右手1本のフォロースルーとなったが、グリーンモンスターを超えるには十分だった。開幕から投打でフル稼働し、二刀流として臨んだ聖地での3連戦。伝説の再来に沸くファンから熱視線が注がれる中、見事に期待に応えた。

これだけでは終わらない。16日は土壇場でチームの窮地を救った。今季初めて「3番」に座り、1点を追う9回2死一塁の場面で打席が回ってきた。一発が出れば逆転——。その期待に応え、クローザーのマット・バーンズから右翼ポール際への逆転2ランで試合を決めた。4連敗中という悪い流れの中、一発でチームの雰囲気を変えた。
「昨日、一昨日と負けているので、負け方もそんなに良くなかったですし、こういう試合を勝てるということは力あると思っているので、ここからいい波が来るように頑張りたい」

主軸として打線を牽引する——チームに貢献したい強い意欲が結果に表れた一打でもあった。

その後も勢いは続いた。17日のインディアンス戦では高めのボール球を捉えて13号3ラン、18日は持ち味の好球必打でセンター越えの14号を放ち、メジャー3度目の3戦連発を記録する。

加速する二刀流のパフォーマンスに、すでにこの時期から本拠地で観戦するファンの“予言”が始まった。「MVP! MVP! 」。5月下旬からチームリーダーで主砲のトラウトが右ふくらはぎの故障で長期離脱となり、大谷へかかる期待と依存はますます高まった。その結果、これまではもっぱらマイク・トラウトへ向けられていたファンによる“MVPコール”が、大谷に継承された。

【PHOTO】世界が驚嘆する偉才・大谷翔平のキャリアを厳選ショットで一挙公開!花巻東、日ハム、エンジェルスでの活躍を振り返る 球場に響く大声援こそが、好成績の要因の一つでもあった。「去年とやっぱり全然違いますし、(観客が)入れば入るほど、選手は頑張れると思うので、もっともっとたくさんの人の前でプレーしたいなと思います」。

元々、大谷は大舞台や緊迫した場面でアドレナリンが出て、より一層、力を発揮するタイプ。無観客だった昨年は、故障明けでコンディションが万全でなかったこともあって、投打とも自己ワーストの成績に終わった。シーズン終了後、「どうしても気持ちが入らなかったのは多少(あった)。やっぱりファンの人の声援があるかないかでだいぶ違う」と吐露していた。それだけ、ファンの存在は二刀流・大谷にとって大きかった。

フィジカル強化で状態も安定し、楽しくプレーする姿が目立った。本塁打を放った際に祝福する三塁コーチの手を強く叩くなど、気迫を前面に示すことも多くなった。メジャー4年目を迎えてこれまで以上に自信がみなぎり、本塁打後の「確信歩き」も板について、スラッガーの風格を漂わせるようになった。
打球速度や飛距離で自己ベストを更新し、投手としても完全復活した4月。進化を結果で示し、5月はチームやファンの期待に応えるパフォーマンスで勢いづいた。

開幕2ヵ月で打っては15本塁打、投げては制球こそ乱れがちながら7試合で防御率2.72。絶好のスタートを切り、徐々にギアを上げ、6月の大爆発につながった。
【つづく】

【動画】批判ムードを一蹴!MVP受賞した大谷翔平の全46本塁打を一挙振り返り!

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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