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シャーザーも多投を懸念…大谷翔平は“絶滅危惧種”の伝家の宝刀とどう向き合うか

やりたいようにやって球史残る成績をマークした大谷。そのピッチャーとしての才能をより際立たせるのが、スプリットだ。(C)Getty Images
 どの投手にもここぞの場面で投じる「伝家の宝刀」は存在する。緊張感のある局面で投じるその一球は、打者を絶対にねじ伏せられるという自信を誰にも抱かせるものだ。
【動画】あのスモルツも唸った大谷翔平の『伝家の宝刀』スプリットでの奪三振シーン

 大谷翔平にとってのスプリットは、まさにそんなボールなのかもしれない。

 二刀流として歴史的な快進撃を続けた今シーズン、投手として9勝(2敗)をマークした偉才は、10.77という圧倒的な奪三振率を誇ったなかで、要所で投じていたのがスプリットだった。

 もっとも、多投をしていたわけではない。球種別の投球割合を見ても、スプリットは、4シーム(44.2%)とスライダー(21.8%)に続く、18.3%にしか満たない。これは2018年にメスを入れた右肘への負担などを考慮しての数値かもしれないが、いささか意外と言える結果かもしれない。

 というのも、「投手・大谷」にとってスプリットは、もはや伝家の宝刀どころではなく生命線とも言えるボールだからだ。なぜなら空振り率(48.5%)と被打率(.087)は、主な球種の中で最も少ないのである。実際、本人も今月15日に開いた会見においても「大きかった」とスプリットを「今季最大のひらめき」の一つとして挙げている。

 そんなボールが際立った試合がある。現地時間9月19日に行なわれたオークランド・アスレティックス戦だ。惜しくも勝利投手になれなかった大谷だが、この試合のスプリットのキレ味は「打てない魔球」(MLB公式サイト『MLB.com』)と称されるほどの球威を発揮した。

 その凄みは数字が如実に物語る。記録した10三振のうち9つはスプリットでもぎ取り、空振りは26のうち18を奪取。投球割合も今季最高となる52.8%を記録し、空振り率も89.3%とこれまたハイアベレージを残しているのだ。
  100マイル(約160キロ)を超える4シームを投げられる大谷にとって、ギャップを生み出せるスプリットは間違いなく重要な引き出しだ。一方で故障への懸念から“絶滅危惧”とも揶揄されたボールでもあるだけに多投するリスクは伴う。実際、先述したように大谷の投球割合も決して多くない。

 ゆえに使い方がポイントとなる。今年7月、MLB通算3020奪三振を記録し、3度のサイ・ヤングに輝いた大投手マックス・シャーザーは、米メディア『The Athletic』で、こう懸念点を口にしていた。

「エースとは突然になれるものじゃなく、何年もかけてなるものなんだ。だから簡単な仕事ではない。オオタニはまだまだ投球に磨きをかける必要がある。とくに腕に決して良くはないスプリットを今後どうしていくのかは考えていかなければならないだろう」

 今季のMVP獲得においても重要な役割を担った「投手・大谷」。その生命線と化しているスプリットはこれからも投げていくことだろう。しかし、二刀流の継続も考慮しなければならない時期も訪れるであろうこの先のキャリアで、彼は負担の小さくないスプリットとどう向き合っていくのか——。その行く末を興味深く見守りたい。

構成●THE DIGEST編集部

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