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大谷翔平越えのインパクト。令和の怪物・佐々木朗希が見せた衝撃の4試合

UPDATE 2021/10/29

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高校時代に最速163キロをマークし、プロ2年目の今季は一軍でも圧巻の投球を見せている千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希。

稀代の剛球投手は、高校時代からすさまじいインパクトを残してきた。「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔より、世界中を虜にする二刀流・大谷翔平より、すごいかもしれない。

そんな逸材「令和の怪物」を語るのは、西尾典文氏。現地観戦数は年間300試合。「日本一ドラフト候補を見ている男」の異名を持つライターだ。佐々木が高校時代に与えた衝撃を、ここに記してもらった。

■クレジット
文=西尾典文

■目次
高2の夏ですでにプロ級
対戦打者が頭部直撃のボールを空振り
史上2人目、大谷翔平以来の160キロ
プロ候補の大学日本代表を12球で仕留める

高2の夏ですでにプロ級

高校時代の松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太、菊池雄星、大谷翔平、松井裕樹、大学時代の和田毅、平野佳寿、岸孝之、菅野智之、大瀬良大地、有原航平……。のちにプロでも大成する好投手のアマチュア時代を現場で見てきた。

そのなかで、もっとも強烈なインパクトを残した選手と聞かれたら、迷いなくこう答える。「大船渡高校時代の佐々木朗希だ」と。

佐々木のピッチングを初めて現場で見たのは2018年7月10日。岩手大会、対盛岡四戦だ。まず驚かされたのが試合前の遠投だった。

佐々木が力を入れてセンターからライト線に向かって投げたボールは、まるで重力を無視するかのような勢いで一直線に飛んでいるように見えたのだ。

かつて「昭和の怪物」の異名をとった江川卓に対して、選抜高校野球で遠投する姿を見た対戦相手の北陽ナインが、そのすごさに思わず言葉を失ったというエピソードを聞いたことがある。佐々木の遠投も、そんな伝説として語り継がれそうなすごみを感じたことを、今でもよく覚えている。

衝撃を受けたのは遠投だけではない。背番号20をつけて先発マウンドに上がると、初球にいきなり153キロをマーク。先頭打者は4球連続ボールで四球を与えたものの、全球が150キロ超え。あまりのスピードに、スタンドからはどよめきと笑いが起こっていた。

2回には、この時点で自己最速を上回る154キロ。佐々木が投じたストレート102球のうち、150キロ以上は35球。平均球速は147.5キロを記録した。

最速150キロ超の高校生は何人もいたが、長いイニングを投げ切ってここまでアベレージが高い選手はいない。100球以上で平均147.5キロはプロの先発投手でも上位である。県立高校の2年生がたたき出した事実が、普通ではないスゴさを物語っている。

さらに驚かされたのが、フォームの完成度と変化球のレベルの高さだ。当時の写真や映像を見返してみても体つきはまだ細く見えるが、左足を大きく上げても姿勢が崩れることはなく、スムーズに体重移動して楽に鋭く腕が振れるフォームは、マウンドから1球投げただけでも“只者ではない”雰囲気を漂わせていた。

当時のプロフィールは身長189センチだが、長身を持て余すことがなく、リリースに力が集中し、打者に与える威圧感も尋常ではない。しっかり腕を振って投げるスライダー、フォークも高校生とは思えないレベルの球質だった。

この試合、9回2失点(自責点1)で完投。2回に甘く入ったスライダーをライトスタンドに運ばれ、6四死球を与えるなど不安定さを見せたものの、そんなことを些細に感じるほど、投手としてのスケールの大きさを示した。

ちなみに佐々木は2年春の県大会でも150キロ超えをマークしていたが、初戦で盛岡中央に敗れたこともあり、多くの観衆とスカウトの前で本領を発揮したのはこの試合が初めてである。翌日のスポーツ紙も大きく取り上げた。

大船渡・佐々木朗希、衝撃の自己新154キロ(日刊スポーツ)
「大谷二世」自己最速154キロ(スポーツニッポン)
“大谷超え”の怪腕現る!(スポーツ報知)
大船渡・佐々木、出た154キロ!160キロ超え目指す(サンケイスポーツ)

佐々木が本当の意味で世に出た試合だった。しかも、大船渡高校は次の試合で佐々木を温存したまま敗れたため、2年夏の登板はこの日だけ。その機会を現場で見られたことは筆者にとっても、この上ない幸運だった。

対戦打者が頭部直撃のボールを空振り

佐々木の大きなターニングポイントとなったのは、2019年3月31日に行なわれた作新学院との練習試合だ。シーズン初登板ということもあって、会場の矢板運動公園野球場には日米合わせて18球団のスカウトが集結した。

報道陣の数も尋常ではなく、テレビカメラまで登場。作新学院の岩嶋敬一部長によると、連日スカウトとマスコミからの問い合わせが殺到し、学校のグラウンドでは収容できないという判断から急遽、球場を確保したとのことだった。長年アマチュア野球を取材しているが、高校生の練習試合でこれだけの騒ぎになったのは初めての経験だった。

異様な注目のなか、佐々木は圧巻のピッチングを見せた。

試合が行なわれた時間帯の気温は8度。投手にとってはかなり厳しい条件だったが、1回に153キロを投じると、2回には156キロ、3回には155キロをマーク。内容は3回1失点だったが、投じた16球のストレートの平均球速は150.2キロで、もっとも遅いボールでも146キロだった。シーズン初登板かつ、低い気温のなかで行なわれた試合ということを考えると、規格外のスピードであることは間違いない。

この試合で強く印象に残っているのが、2回に迎えた7番・福田真夢への投球だ。空振りさせたボールが、福田の頭を直撃したのだ。完全にスイングしていたため、本来であればストライクとなるはずだが、頭に当たったことで審判も動揺したのか死球を宣告し、福田はそのまま大事をとってベンチに下がった。

作新学院で2年からレギュラーを務めている打者が、頭に当たるようなストレートを空振りすることは、普通ならあり得ない。審判がスイングを見逃すのも非常に珍しい。福田にとっても球審にとっても、見たことのないレベルのボールだったことを物語るシーンだった。

2年夏の岩手大会、3年春の練習試合の2試合を見ただけで、間違いなくドラフトの目玉となることを確信した。そして佐々木は、この後も強烈なインパクトを残し続けた。

史上2人目、大谷翔平以来の160キロ

公式戦最後の登板を見たのは、7月21日、夏の岩手大会4回戦の対盛岡四戦だ。この日は過去の2試合とは違い、立ち上がりはかなりスピードを抑えてのピッチングだった。しかし8回に投じた117球目に、高校野球史上2人目となる160キロをマークした。公式戦では大谷翔平以来の出来事だった。

9回に2点差を追いつかれて延長戦に突入したが、12回を一人で投げ抜いて21奪三振をマーク。打っても決勝ツーランをライトスタンドにたたき込むなど、まさに独り舞台という試合だった。

プロ候補の大学日本代表を12球で仕留める

高校時代の佐々木を最後に見たのは、8月26日、第29回WBSC U-18ベースボールワールドカップの壮行試合として行われた大学日本代表との対戦。佐々木は、高校日本代表の先発投手としてマウンドに立った。

宇草孔基(法政大・現広島)をレフトフライ、小川龍成(国学院大・現ロッテ)と柳町達(慶応大・現ソフトバンク)を連続三振に仕留め、わずか12球で三者凡退に抑え込んだ。その間、投じたストレートは全球150キロ以上をマークした。

のちにプロに進んだ3選手を簡単に抑えたこともすごいが、それ以上に試合前の投球練習が強烈だった。キャッチングに定評がある捕手・水上桂(明石商・現楽天)が、佐々木のストレートを満足に捕球できずに後逸を繰り返したのだ。

慣れないナイターと大観衆を前にした緊張もあったはずだが、高校球界を代表する捕手が満足に捕球できないことは驚きである。

佐々木のアマチュア時代のピッチングを生で見たのは以上だ。わずか4試合だが、そのすべての試合で筆者は、圧倒的な衝撃を受けた。

筆者の経験に基づくと、最初のインパクトが強い選手ほど、2回、3回と見る機会が増えていくたびに欠点に目が向き、物足りなさを覚えるケースが大半だ。しかし佐々木は、常に新鮮な衝撃を与え続けてくれた。

そして末恐ろしいのは、いまだに“底”が見えないことである。

プロ入り2年目の今年は一軍でも度々、圧巻のピッチングを見せたが、才能の開花という見方では、“五分咲き”程度だろう。彼のポテンシャルに見合う筋力と体力が身についたとき、佐々木朗希という投手はきっと、日本の野球界に収まらない存在になっているに違いない。

■プロフィール
西尾典文(にしお・のりふみ)

1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。プロアマ野球研究所でも毎日記事を配信している。

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