力を証明した日本と、スペインのしたたかさと。|元日本代表・渡邉知晃コラム

FIFAフットサルワールドカップ第2戦はスペインに2-4で敗戦した。

この試合をご覧になった方は、日本の勝利を期待できる内容だったと感じただろう。僕自身もそうだった。

当然、40分間でスペインのほうが一枚上手だった、最後は自力の差が出た、といった意見もあるだろう。劣勢の展開でも、しっかりと逆転勝利できることは、間違いなくスペインの強さだった。

ただし、日本はやはり、素晴らしい戦いをした。まずは良かった部分に注目したい。

それは、完璧だった第1ピリオドの「ディフェンス」だ。

■日本代表vsスペイン代表|試合レポート

文=渡邉知晃(元フットサル日本代表)

FIFA フットサル ワールドカップ 2021
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パス回しが得意なスペインにパスミスを誘発させた

ブルーノ監督は常々、日本の最大の強みはディフェンスだと話してきた。そして、その言葉どおりのディフェンスでスペインを苦しめた。

1失点目のボルハのゴールは、スピード感のあるワンツーからの完璧な崩しと完璧なシュートだったので、相手を褒めるべきものだ。

それ以外は、少なからずピンチを招くシーンはあったものの、ほぼ完璧な前からのプレッシングでスペインの攻撃をシャットアウトしていた。

個人戦術に優れ、流れるようなパス回し、組織で崩すことに長けたスペインが、らしくないパスミスやボールロストをしている様子を見ても、明らかに焦っていた。日本のディフェンスが相手に脅威を与えたのだ。

印象的だったのは、日本が逸見勝利ラファエルのゴールで逆転した直後のタイムアウト。スペインのビダル・フェデリコ監督は声を荒げていた。世界ランキング1位のスペインを苦しめていた、まぎれもない証拠だろう。

日本に敗戦をもたらした男・ソラーノ

次にこの試合のキーポイントだが、第2ピリオドにスペインが試合をひっくり返すきっかけとなったのがソラーノだ。

スペインは4人のパスワークを主体とするクワトロのセットと、ピヴォを前線に置いた3-1のセットを使い分けていたため、ピヴォのソラーノの出場時間が、際立って長いわけではなかった。

それでも、ピッチに立っている時間は、ボールを受けると積極的に、いや、常にといっていいくらい反転シュートを狙っていた。ワンチャンスを虎視眈眈と狙っていたのだろう。

日本のディフェンスも第1ピリオドから強力なピヴォをしっかりと抑えていたが、第2ピリオドに左サイドの反転からの流れで、ゴレイロを含む3人を交わして同点ゴールをアシストした。

同点ゴールを挙げたチノ(右前)と、その得点の大部分を担うアシストという仕事を遂げたソラーノ(左奥)

そして勝ち越しは、ゴール前でのフリーキックからだった。このフリーキックにつながるファールをもらったのもソラーノだった。あのシーンが本当にファウルだったのかという話は置いておくが、ソラーノは、この試合の審判のファウル基準を把握した上で、“もらいにいった”可能性が高い。

第1ピリオドにも同じようなファウルをもらっているだけに、彼の試合巧者ぶりを象徴するシーンだった。こうした細かい駆け引きが、得てして勝敗を分けるポイントになるものなのだ。

日本は敗れはしたものの、W杯の舞台で、スペイン代表を苦しめた。これは大きな積み上げとなるに違いない。日本が勝ち上がればきっと、もう一度戦う場面がくる。

次はノックアウトステージで、この試合の借りを返してくれることに期待したい。

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