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酷暑&コロナ禍での部活動は、無理ゲーです。ある高校サッカー部監督の提言

UPDATE 2021/08/24

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2年ぶりに筆を執りました

3年前、私はフットボリスタさんで『酷暑のサッカーはお金がかかるという記事を出させていただきました。連日「猛暑日」が続くなか、高校生の部活動を指導して感じていたことを発信しました。

記事は思いのほか反響を呼び、多くの反応や意見をいただきました。今回は、さらに「コロナ禍」という厳しい状況が重なるなかでの部活動の現状を共有し、今後のみなさんの取り組みに対して意味ある提言になればと思い、再び筆を執りました。

今回のポイントは、こちらです。

1.やっぱり酷暑のサッカーは大変
2.コロナ禍における様々な制限との合わせ技でもっと大変
3.これからのこと

本題に入る前に、少しだけ私の自己紹介をしておきます。

以前の和歌山県立粉河高校から橋本高校に異動となり、新たな地でサッカー部の顧問をしています。Twitterの旧アカウントが不慮の事故で凍結となり、新たなアカウントで細々と日々の活動や備忘メモなどを発信しております。

やっぱり酷暑のサッカーは大変

お盆前後は、酷暑はどこへ?と感じたものの、7月下旬は今年も「酷暑」でした。

梅雨が長かったこともあり、一気にその暑さをぶつけられたような盛夏へと突入。夏休み前の平日であれば、部活動の開始時刻が夕方となるため、気温もある程度は落ち着いた時間帯(17時〜19時くらい)での活動を行っていました。

しかし、7月21日から夏休みに入ると状況は一変しました。本校サッカー部は、9時から11時まで活動時間に設定しています。この時間帯でも十分暑い。ここは、例えば活動時間を1時間前倒しするなどの工夫で多少、暑さを軽減することも可能だと思います。

ですが、本校のように通学に使用する電車の本数が少ない、学習面との時間配分への配慮など、様々な要因から「部活動中心」の調整が難しい現状もあります。実際、通学に1時間以上かかる生徒や、午後は補習や塾の夏期講習に参加する生徒も多くいます。

そして、兎にも角にも「暑い」ということです。そのため、常について回るのが「冷却用の氷の確保」という問題です。

学校における部活動であれば、学校に備え付けの製氷機を活用する方法もあり得ますが、一般的に「自クラブのみが十分に利用できる」状況は少ないと思います。そこで、「自クラブで利用できる氷の配分量でやり繰りする」か「足りない分は適宜補填する」という選択肢になります。実は、今年度は部員数が14人と少ないため、日々の活動は学校の製氷機でなんとかやり繰りできています。問題は、練習試合などの校外での活動時です。

基本的な方針は、「夏に行う試合」だと『スクイズボトル用』(人数分は最低限必要『ポカリなどをジャグタンクで作る用』『身体冷却用』(氷水でタオルなどを冷やす)を、「給水」「クーリングブレイク」「ハーフタイム」「試合前後」といったタイミングで準備するイメージです。各自で準備できるものもありますが、当然こちらで購入、準備するものが大半となります。もちろん、人数が増えるほどに経費はかさみます。

ざっと見積もると、1試合における「氷の出費」はこのようになります。

・スクイズボトル用(×15本):バラ氷1.1kg×10(約250円×10=2500円)
・ポカリなどをジャグタンクで作る用:板氷1枚(約300円)
・身体冷却用:板氷1枚(約300円)

1日2試合とすると、単純に2倍です。

ただし、昨年度と今年度は、夏季休業中の活動に対する制限が重なるため、実はそこまで大変な状況にはなっていません。しかしあくまで現状の話であり、これまでのような活動を今後も想定するのであれば、常に向き合うべき課題だと思います。

ちなみに、熱中症対策としてサッカー部独自で選手に伝えている指針はこちらです。

・炎天下で20分以上連続でプレーしないで日陰に入る
・全体での練習は2時間まで
・35℃以上の日は練習を中止する
・2日活動したら1日オフを設定する

コロナ禍における様々な制限との合わせ技でもっと大変

とうとう「第5波」という状況のなか、緊急事態宣言の発出や様々な方針に合わせ、部活動も多くの制限を受けています。昨年度は全国的に一斉休校措置が取られるなど、そもそも部活動が禁止という状況もありました。

その後、少しずつ具体策が模索され、活動指針もその度に通達されてきました。例えば、活動中のマスクの着用や、対人練習の禁止、使用用具の消毒、道具などの共用の禁止、そのほか多くの制限が、その時々のコロナ感染状況などに応じて求められました。

現状は、自クラブ内での活動においてマスクは必須ではなく、可能な限りスクイズボトルなどの共用は避ける、対外活動としては県内チーム同士の試合などは可、県外とは不可(段階としては諸宣言発出地域とは不可、もあります)のような指針です。

◆コロナ対策の変化(2020年6月頃→2021年8月現在)

・活動中のマスクの着用→自クラブにおいて必須ではない
・対人練習の禁止→段階的に緩和されたが状況次第で変更の可能性あり
・使用用具の消毒→緩和され、手洗いなどの徹底で対応可
・道具などの共用の禁止→スクイズボトルなどの共用は避ける
・対外活動→県内チーム同士の試合などは可能(県外チームとはNG)

これにより、結果として活動そのものが縮小していること、水分補給も個人が準備して持ち寄る形が拡大していることなどから、金銭的なコストは例年に比べてかなり落ち着いている実情もあります。しかし、各自の負担が増えるということは、選手の家計に負担を強いている状況ということも意味しています。

また、「労力的なコスト」は大きく負担が増加しています。単純に、コロナ禍でなければ必要のなかった行動分が上乗せされているからです。結局、「どうすることが最適解か」は、それぞれが模索しながら現状を乗り越えている現実があると思います。

大会などの開催状況ですが、本来、1月から2月にかけて行われる新人戦は、1月の2回戦まで実施して中止、その後、3月に少し緩和されたことでリーグ戦が始まりましたが、4月後半から5月半ばまで練習試合も禁止となったため、何試合か延期となりました。昨年度の総体予選は中止でしたが、今年度は無観客試合の形で実施できました。

やっぱり「夏はオフ」でいいんじゃないの?

以上のように、現時点では「酷暑をいかに乗り切るか」「コロナ禍をいかに乗り切るか」という2つの課題と向き合い続けている状況です。極論かもしれないですが、「こういう時はなるべく活動しない」のが一つの答えではないかと常々、思っています。

結局、活動をすれば当然それに対してのリターンを得られますが、いわゆる「コスト対効果」を考えると、基本的にはネガティブな印象が強くなります。

「そこは工夫次第だ」も正しいと思いますし、私自身もできる限りの工夫や配慮をしながら現状を乗り切ろうとしているつもりです。

とは言え、本音は「夏はオフ」でいいのにと思っています。酷暑の時期にオリンピックやインターハイが開催された活動が是となりうるこの国の空気感のなかでは、「夏はみんなでオフシーズンにしましょう」という話がどれくらい浸透するかは疑問ですが……。

酷暑で活動するのはよくないよね、という声は多く聞きます。しかし、実際に活動を休止しましょうという話はほとんど聞きません。きちんと対策が必要ということかもしれないですが、リスクとリターンの関係はきちんと整理されるべきだと思っています。

リーグ戦文化の拡大に伴い、あらゆる年代で日程が過密になっている側面もあります。その是非を問うというより、日本の文化の根底にある「四季」の移ろいに歩調を合わせ、既存の日程の隙間を見つけ、次々とねじ込むような運用に陥ることなく、一度きちんと整理して「効率的」な育成の土壌が形成されていけばいいのにと、個人的には感じます。

「育成の最適解」を模索する軸は共有されるべき

サッカーとは、移り変わる試合状況で常に「最適解」を求めて戦い続けるスポーツだと思います。今回の記事を書くにあたっても、自分自身が向き合っている状況に対する「最適解」とは何かを改めて見直す機会となりました。

全国には様々なチームがあり、それぞれの事情を抱えていると思います。

ですから、先ほど述べた「夏はオフ」についても賛否はあるでしょう。しかし、目の前の選手たちの「育成の最適解」を模索するという軸は共有されるべきだと思います。

その中身を精査する際に、今回お伝えした「熱中症対策」と「コロナ禍対策」も考慮すべき点として捉え、皆様のつながりのなかで共有、議論されながら、より良い環境・状況を目指す空気感が醸成されることを願っております。

■プロフィール
脇真一郎(わき・しんいちろう)

1974年10月31日、和歌山県生まれ。同志社大学卒。和歌山県立海南高校でサッカーと出会って以降、顧問として指導に携わる。2013年に同県の粉河高校に異動となり、主顧問として7年間指導した後、2021年から同県の橋本高校に異動し、主顧問としてチームを指導する。指導分野のみならず、2018年に『フットボリスタ・ラボ』1期生として活動を始め、同年8月に執筆した記事「酷暑のサッカーにはお金がかかる」が大きな反響を集め、2019年7月に『プレー経験ゼロでもできる実践的ゲームモデルの作り方』(ソル・メディア)を出版した。

Twitterアカウント:@rilakkumawacky

■クレジット
編集・本田好伸

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