• HOME
  • 記事
  • その他
  • リーグ参入1年目。果たしてジークスター東京のIoT化は進んだのか?

リーグ参入1年目。果たしてジークスター東京のIoT化は進んだのか?

<写真提供:ジークスター東京>

2021年4月10日、ライブリッツ株式会社主催のWebセミナー「ジークスター東京のIT活用〜データ分析や映像解析で強いチームに〜」が開催されました。

男子ハンドボールチームジークスター東京は日本ハンドボールリーグ(以下JHL)に2020-2021シーズンより参入しました。ITコンサルティングをてがけるフューチャー株式会社が率いるフューチャーグループ傘下にあり「ハンドボール×IT」を掲げています。それを先頭で担うのが同グループでスポーツ界をITで支えてきたライブリッツ株式会社です。セミナーではジークスター東京がITを活用しどのようにチーム強化やファンサービスに取り組んできたかが語られました。

※2020年末にAZrenaでは、ジークスター東京が新体制の元でどのようなハンドボールを目指すのか、競技の可能性やIoT化について取材しています。

ジークスター東京 アナリスト・荒川哲史氏(ライブリッツ所属)、ジークスター東京 監督・横地康介氏、ジークスター東京 マネージャー・高宮悠子氏が登壇し、解説しました。セミナーの一部をご紹介します。

リアルタイムで映像とデータを活用。「スポステ!ハンドボール」

荒川:ライブリッツ株式会社は野球、ソフトボール、サッカーなど様々な競技のプロ・アマスポーツチームに対してチーム強化やファンエンゲージメントを支援するシステムやサービスの提供をしています。

まずはジークスター東京のチーム強化への取り組みからお話しします。チーム強化サービス「スポステ!ハンドボール」は、複数のプロ野球団に採用されているチーム強化システムをハンドボールに応用したものです。

チームが活動する中でバラバラに発生するスコア、映像、センサー等のデータを一元管理し、シーンに応じたデータの組み合わせで分析できます。試合分析機能では全プレーをデータ化し、試合中・試合後に関わらずプレー映像を見ながら分析できます。

監督やアナリストだけでなく、選手自身が自分のスマホやタブレット端末からいつでも試合の映像やデータが見られ、試合前の戦術の検討や試合後の振り返りをしています。

パフォーマンス管理機能では選手が装着したセンサーと連携し、加速度、心拍数などのデータを取得・分析します。選手の能力や体調を可視化して能力向上に活用するほか、日々のトレーニングの負荷を調節して怪我予防にも役立てています。

チームは試合ごとにPDCAサイクルを回して「スポステ!ハンドボール」を活用してきました。「Plan」では、試合前に過去の試合分析やゲームプランの作成、映像の共有をして対戦相手に備えました。

JHLでは2020-2021シーズンより試合中に、情報端末のベンチへの持ち込み、ベンチとベンチ外との通信、ウェアラブル端末の装着が可能となりました。そこで「Do」では試合中にもスタッフ間で綿密なコミュニケーションを取りながら、戦術変更や選手起用においてデータを活用しました。

試合後の「Check」できちんと各試合を振り返り、「Action」では日々の練習に落とし込み、チームの成長や次の試合への対策につなげました。連戦のときは選手のコンディショニングも確認しています。

横地さん、実際現場で「スポステ!ハンドボール」を使っていて特に役立ったと感じたのはどういった場面でしたか?

横地:これまで練習中に動き方や体の使い方について選手に指摘するときに言葉ではなかなか伝わりづらいという悩みがありました。「スポステ!ハンドボール」ではすぐに動画で確認できるので、その場で一緒に客観的にチェックしながら会話ができ、重宝しています。

今後さらにデータを蓄積していって、ゲームプランに役立てていければと思っています。

独自の基準でデータを分析しチームの強み・弱みを的確に把握

荒川:ここからは、2020-2021シーズンのジークスター東京のプレー状況について、「スポステ!ハンドボール」の情報を用いて解説します。前提として、攻撃回数、コート往復回数、得点期待値、失点期待値をチーム独自の分析基準にしています。

ジークスター東京の目標は「プレーオフ進出」でしたが、最終順位は7位となり達成できませんでした。プレーオフに進出した4チームとデータを比較し、検討しました。

ジークスター東京のよかった点は、速攻時の得点期待値がプレーオフ進出レベルで維持できていたことです。一方で、コートの往復回数や攻撃回数はリーグで下位に位置しています。

ハーフコートでの得点期待値が低いことと、相手が速攻を仕掛けてきた時の失点期待値が高いことも課題です。コートの往復回数が増えるほど、点差が開いていってしまっています。

横地さん、この数値を見てどのように感じますか?

横地:もっと攻撃回数を増やして、アップテンポな展開をしたかったですね。想定よりも怪我人が多く出てしまったことにより、意図的に試合展開のスピードを落とさざるを得なかった局面が多々ありました。それがそのまま数値に表れていると感じます。

荒川:ここまでの考察を踏まえて、来シーズンはどのように「スポステ!ハンドボール」を活用していきたいと考えていますか?

横地:リーグ参入1年目かつコロナ禍で、戦い方が難しいシーズンでした。蓄積したデータからチームに足りていなかったところ、よかったところを分析し、来季のチーム作りに活かしていきます。

また、指導者として有用なデータを選手たちに提示することはもちろんですが、選手自身が映像やデータを見て課題を分析する力をつけて欲しいと思っています。選手自らデータを理解できるように取り組んでいきたいですね。


<写真提供:ジークスター東京>

関連記事