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「一番大事なことは……」“水の怪物”と呼ばれながらうつ病に苦しんだオリンピアン、マイケル・フェルプスが今だからこそ明かすメンタルヘルスの重要性

UPDATE 2021/07/31

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競泳界のレジェンドで「水の怪物」の異名を持つマイケル・フェルプス氏。2000年に行われたシドニーオリンピック(五輪)から2016年のリオデジャネイロ五輪まで5大会連続で出場し、通算23個の金メダルを獲得した。

歴代最強のスイマーとして称賛されるフェルプス氏だったが、選手時代は重度のうつ病との戦いでもあった。しかし彼は大会のたびに自身と向き合い、輝かしい功績を残してきた。

そんなフェルプル氏は、引退後から自身が立ち上げた財団の一環として、子供たちの健康と活発なライフスタイルを推進するなど、次世代の育成に積極的に取り組んでいる。

今回、Panasonicの『ソウゾウするちから〜本当の自分と泳ぎ続ける〜』に参加したフェルプス氏は、子供たちに対してプレッシャーや困難との向き合い方、夢を追うことの大切さを語った。イベント後「SmartSportsNews」は、フェルプス氏の独占インタビューを行った。

レジェンドが実践したメンタルヘルスとは

──東京オリンピックは史上初めてとなるコロナ禍で開催される五輪です。大会を観戦されてどう評価されていますか?

世界中がこのように新型コロナウイルスに見舞われているなかで、ここまで立派な形で開催されるとは想像もできませんでした。東京の方々や五輪委員会のみなさんの素晴らしいご尽力があってこそだと感じています。私自身もこうして日本にやってくることができて嬉しく思っています。

5回の五輪を経て、今回は初めて選手ではない立場で参加しているので、今までとは違います。ただ、こうした機会を得られて感謝してもしきれないと思っています。できればもっと長く滞在して、観光などをしたかったですがそれは叶わないので、近々、またやってきたいと思っています。

──東京五輪は史上初となる1年間の延期を経て開催されています。仮にあなたが選手の立場だったとして、この1年の延期を聞いた後、どのようにメンタルヘルスを保ちますか?

言えることの1つとして「自分がコントロールできるものをしっかりとコントロールする」ことが大事だということです。しっかりとプールに入り、水泳をして、必要なワークアウトをする。自分がコントロールできる限りのことを全て行って準備をする。それが一番大事です。

2016年にこの状況だったとしたら、私なら水泳を続けて次の五輪を目指していたと思います。本来なら4年待たなければいけませんが、今回は1年少ないですよね? 3年間で次の大会が来るのであれば、次の五輪に出ることを考えます。実際に世界中のアスリートの方たちもそれを考えていると思います。次の3年後も考えながら頑張ってもらいたいと思います。

──パンデミックの中で行われている東京五輪ですが、この大会を経て3年後のパリや7年後のロサンゼルス大会ではどのような変化があるとお考えですか?

常に過去や経験から学びを生かしたいものですね。今回のことからもしっかり学んで、どんなことがあっても、何があっても対応できるということをこの学びを生かしていきたいと思います。

──フェルプスさんは5大会の五輪で23個の金メダルを獲得しました。あなたのようにここ一番で力を発揮するために、メンタルヘルスで一番大事なことは?

ここでも答えは、「自分でコントロールできることをコントロールすること」に尽きると思っています。例えば、今日は調子が良くない、うまくいかないという日があったとしたら、それは何故なんだろうということをしっかりと考える。または、こういう感情、気持ちが出てくるのはなぜだろうと考える。そしてそのことを他の人にも打ち明けることが大事です。

自分だけではどうにもならず、周りの助けが必要なこともあります。その時には支えが必要です。そして自分でやらなければいけないことをしっかりやる。自分を見つめることが一番大事なことだと思っています。

──選手時代を振り返るとアスリートが金メダルを取る意味や意義、または勝利以外の部分での価値観はありましたか?

私にとってはタイムとの戦いが重要なものでした。自分の限界を超えてどこまでできるか、本当の自分の力はどれくらいなのかというところにチャレンジしていました。それが自分の努力を続ける原動力となりました。なのでみなさんには、できる限り大きな夢を持ってその大きな夢に向かっていくことが大事だと伝えたいです。

私は自分のゴールや夢を紙に書き出していました。それを見たみんなは「クレイジーだ」、「誰もやったことないしできないよ」と言っていましたが、私自身は絶対にできると信じていました。

そしてチャンスをものにするためには、自分にできるあらゆることをしてきました。なので実際に成果が出た時は嬉しいものです。表彰台に登って金メダルを首にかけてもらい、国歌を聞く。あの瞬間に勝る喜びはありません。

今は選手ではありませんが、私自身はとても競争心が強く、多分地球上で一番に競争心が強い人間だと思っています。だから今は競争の立場にいないことにを寂しく思いますが、若手の皆さんを見ていると彼らの気持ちがわかります。彼らにどれほどの努力があって、結果を残しているのかに共感できます。

若い皆さんやファンに伝えたいことは、できるだけ大きな夢を掲げることです。やってみないと、100%の力を出し切ってみないと、自分がどこまでできるかわかりません。私も現役時代に、自分がここまでできるんだと自分に驚いたことが何度もあります。自分を信じてみなさんにも頑張ってもらいたいと思います。

■クレジット
写真:パナソニック提供
取材・インタビュー:上野直彦
構成:Smart Sports News 編集部

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