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【コラム】Fリーグはなぜ“炎上”したのか。「無意味な入替戦」を引き起こしたクラブライセンス対応の問題点

今、フットサル界が荒れている。

少なくとも、フットサル関連のフォローが多い僕のタイムラインは、一つの話題でもちきりだ。もはや、このテーマに触れないわけにはいかない想いにかられるほど心がざわついている。

「トルエーラ柏のF2ライセンス交付」

3月9日(火)17時30分、Fリーグから発表された1本のリリースが事の発端だった。

「トルエーラ柏の2021年度のライセンスについて、Fリーグが定めるF1ライセンスの競技基準を満たしていないことからF2ライセンスを交付することが決定しましたので、お知らせいたします」
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このリリースを伝えたFリーグ公式Twitterは、(少なくともフットサル界では)ものすごい勢いで拡散された。10日(水)0時の時点で500件近くリツイートされた投稿のうち、半数以上がコメント付きで引用されている。

「ありえない……」「うそっ!?」「柏がかわいそう」「柏をF1で見たい」

柏が全日本選手権で優勝し、いざ週末の入替戦へというタイミングだったことも重なり、フットサルファン、柏のファン・サポーターの嘆きや怒りの声であふれている。なかには、元Fリーガーの声も発信されている。

「ライセンスの基準を公表してほしい」「入替戦やる意味ないよね」「これではいつまでたってもリーグが盛り上がらない」「なぜこのタイミングの発表なのか」

感情的な意見、冷静な見解、さまざまな憶測……いったい、Fリーグに何が起きているのだろうか。

「F2ライセンス交付」自体は非難されるものではない

まずは、事実だけを伝えようと思う。

① 9日に発表されたFリーグのリリース
「トルエーラ柏はFリーグが定めるF1ライセンスの競技基準を満たしていないことからF2ライセンスを交付する」
② Fリーグの入替戦実施概要の記述
「本大会を開催するにあたり、参加するF2チームにF1クラブライセンスが付与されていない場合でも本大会は実施する」

つまり、ライセンス交付の有無にかかわらず、入替戦が開催されると明記されている以上、規約違反には当たらない。それにもかかわらず今回の出来事が物議をかもしている理由は、大きく2つのポイントが考えられる。

① 入替戦前の発表というタイミング
② Fリーグクラブライセンスの基準が公表されていない

加えて、9日の11時に、Fリーグ公式Twitterアカウントが「柏のF2ライセンス交付」を先出し(すぐに削除)してしまったことで、ユーザー心理が揺れているということも、今回の“炎上”を加速させている要因だろう。

クラブライセンスとは本来、健全なリーグ運営を目指すために制定されていることを考えても、柏に「F1ライセンスが交付されない」ことで残念に思う心情は理解しつつ、真っ当なリリースであることは否定できない。

それでも、先に挙げた2つのポイントが理由で、看過できない事態に発展している。

昇格できない無意味な入替戦をなぜ実施するのか?

ディビジョン1・ディビジョン2 入替戦は、今週末の13日(土)、14日(日)に開催される。今回のリリースにより柏のF1昇格の可能性が消滅したことを考えると、入替戦の目的が限りなく無意味になることは間違いない。

Fリーグがシーズン当初から明文化していたとはいえ、その状態で実施する意味とは何か。そもそも、「参加するF2チーム(F2優勝チーム)にF1クラブライセンスが付与されていない場合は実施しない」ではダメなのか。

入替戦の前に発表されたために、この一文がクローズアップされることになった。

たとえば、昨シーズンのJリーグは、2020年9月時点で「Jリーグクラブライセンス判定」がリリースされている。昨シーズンはコロナ禍のイレギュラーのために入替戦は実施されなかったが、通常、2月〜12月に開催されているJリーグの場合、入替戦は12月に開催される。2019年のJリーグには、次のような一文が明記されている。

「J3における年間順位の上位2クラブのいずれもがJ1クラブライセンスもしくはJ2クラブライセンスの交付判定を受けていない場合には、J2・J3間の入れ替えは行わない」
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当然、ストレートに昇格できるJ2ないしはJ3優勝を飾った場合でも、入替戦に出場できる順位になった場合でも、上位カテゴリーのライセンスが交付されていなければ、入替戦に出場することはできない。

実際、Jリーグでは、この条件に該当したケースがあった。

2017シーズンにJ3を優勝したブラウブリッツ秋田は、J2ライセンス取得に必要なスタジアム基準を満たしていないことを理由に、J2ライセンスの申請を出さないことをシーズン中に発表していた。上位2チームがJ2に自動昇格というレギュレーションだったが、このシーズンは昇格枠が減少し(3位が繰り上げで昇格しない)、2位になった栃木SCのみJ2へ昇格した(その後、秋田は2019年から2年連続でJ2ライセンスが交付され、2020シーズンに優勝して今シーズンからのJ2昇格を果たした。Jリーグのクラブライセンス審査は毎年行われ、毎年交付される)。

その秋田と同様、今シーズンからJ2に昇格したSC相模原は、これまでJ2ライセンスを保有していなかったため、「優勝しても昇格できない」という状況にあったが、2020年9月にライセンスが交付されたことで道が開け、交付決定以降の試合から18試合無敗という破竹の勢いで上昇し、最終節でJ2昇格を決めたという事例もある。

Jリーグの基準で考えるなら、クラブライセンスの交付は、シーズン中盤に発表されるべきものだろう。

Fリーグでは、ボアルース長野が2020シーズンのF1昇格を決めた際も似たような出来事があった。F2で優勝した彼らは、F1で下位に沈んだアグレミーナ浜松との入替戦に勝利したものの、2019年2月24日の試合後に発表されたFリーグのリリースにはこのように記されていた。

「Fリーグクラブライセンス基準に基づき3月13日(水)に開催するFリーグ実行委員会にて審議を行い、最終決定いたします」
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つまり、20日近く「F1昇格権獲得」状態で待たされていたのだ。仮に、長野にF1ライセンスが交付されなかった場合はどうなっていたのか。おそらく、今回と同じように物議をかもしていたはずだ。

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