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【開幕直前緊急対談/北原亘×稲葉洸太郎】どうなる?コロナ禍で迎える14年目のFリーグ!「今シーズンはABEMAでシーズン丸ごとチェックしてください!」

いよいよ、Fリーグ2020-2021シーズンが開幕を迎える。14年目となる今年は、新型コロナウイルスの影響も大きく、当初の5月末予定から3カ月ずれ込むと同時に、9月、10月は無観客のリモートマッチでのスタートが決まった。さらに、レギュレーションも現行の3回戦総当たりから2回戦総当たりとなり、プレーオフも実施されない。いまだかつてない状況下の今シーズンは、いったいどんな戦いが繰り広げられるのか。

もちろん、明るいニュースもある。Fリーグ中継を担当してきたABEMAが、今シーズンは全試合を完全生放送する。各選手、各チームの動向をこれまで以上にチェックできる環境が整備されたのだ。

そんなABEMAの放送で解説を担当するのが、元名古屋オーシャンズのキャプテン・北原亘氏と、バルドラール浦安、フウガドールすみだ、Y.S.C.C.横浜でプレーし、昨シーズン限りで現役を引退した稲葉洸太郎氏だ。日本最高峰を知る両者は、今シーズンをどのように展望するのか。優勝争い、昇格チームの戦い、新監督、注目チームや注目選手……元日本代表コンビの2人が、Fリーグを何倍も楽しむための見どころを語り合う!

外的要因にも左右される新シーズンの展望は?

──待ちに待った新シーズンが開幕しますが、今年は新型コロナウイルスの影響を含めてたくさんのトピックがあると思います。これまで経験したことのないシーズンとなりますが、展望をお聞かせください。

北原 やはり触れておくべきことは外的要因ですよね。つまり、新型コロナウイルスの影響。開幕が遅れたこともそうですし、自粛期間などもあって、練習試合を十分にできていないチームもあります。選手は今までにないことを求められるシーズンであることは間違いありません。

稲葉 練習量と試合感覚の影響は確実にあるよね。

北原 そう思う。それに、シーズン中もコロナの影響を受けてしまうかもしれません。たとえばJリーグでもクラブ内で感染者が発生して試合中止や活動停止となった例がありますが、フットサルの場合はさらに厳しいことになるのかなと。所属選手数がサッカーより半分くらい少ない人数だからこそ、選手登録の関係で試合消化できなくなる可能性もある。もちろん、中軸選手が抜けた場合はその影響も大きいですよね。

稲葉 選手層はポイントになりそうだね。たとえば誰か一人が2週間の隔離となったとして、その選手の役割の比重が大きかったチームは苦しくなるからこそ、チーム全体としてバランスよく選手を使えているチームが強いだろうなと。

──常にリスクと隣あわせでの戦いを強いられるわけですよね。

北原 そうした状況下でいかにチームを構築するのかがポイントになると思います。それと今シーズンは、ルール改正に適応しないといけないという側面もあります。いくつか大きな改正点がありますが、たとえばセットプレーの際のブロックが厳しく制限されたので、各チームはどのように落とし込んでくるかも注目です。

稲葉 (決定機会阻止の場面における)プロフェッショナルファウルが寛容になったよね。ABEMAで解説を担当するときなどには、見る人がわかりやすいように伝えていこうと思うけど、今シーズンはファウルコントロールもキモになりそうだなと。どのチームも、新ルールのなかで公式戦を戦うのは初めてなので、選手一人ひとりがどれくらい適応できるかによって試合の質も変わってくると思いますね。

北原 あと、コロナの影響だと思うけど、開幕時点で登録されている外国籍選手も非常に少ないよね。その辺も、これまでのシーズンとは印象が変わってくると思います。

稲葉 名古屋オーシャンズに加入したタイ代表のスパウットと、ブラジル人のペネジオはまだ来日できていないみたいだからね。外国籍選手は、ぺピータと、(帰化申請中の)アルトゥールの2人だけ。

──先ほどの練習量と試合感覚という部分の影響はどうでしょうか?

稲葉 コロナの影響で、全体練習が2カ月止まったチームもありますし、自分が選手だったらと想像したら、ものすごく難しい時間だろうなと……。そのなかで、選手一人ひとりが普段からどのように過ごしてきたか、練習が再開してからどのようにチームで取り組んできたか。そこでやってきたことが、特に最初の数試合はダイレクトに見えてくると思います。それと、試合感覚がズレたなかではケガも怖い。練習試合とリーグ戦の強度は違いますから、120%を出す舞台にいきなり入って大きなケガが頻発したらよくないなと。

北原 今年は「問う」のではなく「問われる」シーズンになりますね。

──というのは?

北原 ようするに、責任を外に押し付けようとすればいくらでもできてしまうということ。「練習ができていないから」「ケガ人が多いから」というのではなく、ベクトルを自分に向けて、自分は何ができるのか、何をしたいのかということが大事だと思います。そう考えると、ベテランと若手の関係がキーかもしれない。

稲葉 ベテランと若手の関係?

北原 たとえば若手にとってはやるしかない状況だし、チャンスだと思えたら強いよね。一方でベテランは、様々な局面を乗り越えているから、そういう選手がチームに影響力を派生させられたらいいのかなと。中堅の立ち位置はチームでも異なるから、勢いのある若手と、いいベテランがいるチームは強いだろうなと思う。

稲葉 バサジィ大分の小曽戸允哉とか、名古屋の西谷良介のようなベテランだよね。

北原 そうそう。Y.S.C.C.横浜はベテランと若手の関係はどう?

稲葉 技術と勢いのある若手もいるし、今年38歳の中野和也という影響力のいいベテランもいて、チームの雰囲気はすごくいいよ。練習試合でもかなり勝っていて結果を出してきているからね。

優勝争いは名古屋優勢だが盤石ではない……?

──では優勝争いについてお聞かせください。やはり名古屋が中心でしょうか?

北原 今シーズンはプレーオフがないので、例年の勝ち点を考えると、名古屋優勢であることは間違いないですよね。でも、最初にお話ししたような外的要因があるから読めないというのが正直なところです。

稲葉 順当にいけば名古屋だけど、対抗できる要因はあるよね。

──では、名古屋の優勝確率は……?

稲葉 うーん……75%かな! やっぱり、順位が激しく入れ替わったり、シーズン終盤まで読めなかったりする展開のほうが盛り上がると思うし、見ている人も面白いから期待したいですね。亘はどう?

北原 普通なら80%〜90%と答えるけど、ベテランが多いし、外国人も来日できていないなかで登録選手数も15人だから、ケガやコロナで一気に崩れる可能性もあるからわからない。未知数すぎる……。

稲葉 名古屋も盤石じゃないということね。

北原 そう(苦笑)。

稲葉 それに、日本代表活動の影響もあるよね。11月のアジア選手権はまだどうなるかわからないから、大会があるようなら名古屋から多くの選手が選ばれるだろうし、他にも、中軸が代表活動で不在となるなかで戦うことになるチームも出てくるから。

──たとえばJリーグは、タレントがそろう川崎フロンターレが独走していますよね。そういう意味では、名古屋のように質の高い選手がそろうチームが抜け出す可能性は高いのかなと。

北原 たしかにそうですが、フロンターレであっても、クラスターが発生したらどうなるかわからない。そういうリスクがあるということです。サガン鳥栖の小林祐三さんと話したんですけど、「仮に優勝争いしているときにこれ(クラスター)が出ていたとしたら立ち直れないと思う」と。それが起こり得るんです。

稲葉 あと上位争いを考える上では練習環境の影響もあると思う。自前のコートや自分たちがコントロールできる施設をもっているのか、一般の民間施設や公共施設を使っているのか。民間や公共施設は使用の制限や再開時期が遅かったところもあるので、今後もその影響が出るかもしれないよね。地域による制限の違いもあるし、どこかの地域だけ緊急事態宣言が出てしまうなんてことも考えられるから。

北原 これはサッカーの例だけど、関東1部のクリアソン新宿というチームは、新宿区独自の緊急事態宣言が出たときに、近隣地域で活動をする選択肢があったなかで、条例にのっとって自粛をしました。だから、ホームタウンで活動自粛になった場合にどうするのかということもありますよね。

稲葉 そうだね。今、自分たちである程度コントロールできる施設をもっているのは、フウガドールすみだと名古屋、シュライカー大阪、バサジィ大分だよね。一方で、公共施設の小田原アリーナを使っている湘南ベルマーレとか、ネーミングライツで「バルドラール浦安アリーナ」となった浦安もそこを使えるようになったのが最近のことだった。人工芝ではなく、なおかつ20m×40mのサイズでできているかも大きいかなと。

北原 そういう意味では、昨シーズンの上位4チームが施設をもっているんだね。

──では、名古屋の対抗馬となるのはどこでしょうか?

稲葉 昨シーズンは大分がかなり追い込んでいましたが、今年はレイチとヴィトンのブラジル人2人が退団したし、正直なところどうだろうと。もちろん、日本人選手の個々の能力は高いし、小曽戸(允哉)も戻ってきたから、個で戦うイメージの大分はどれだけパワーアップできているか。準備期間ということで言えば、ある意味では時間があったから、今までで一番作り込めている可能性もあるよね。

──大分は伊藤雅範監督の下で、毎年地獄の走り込みをしているそうですね。

稲葉 そうですね。ベースを築いているから個で戦えるけど、逆に言えば、個の調子が悪ければ落ちてしまう。その意味で今シーズンは準備がどれだけできたかで大きく変わると思う。上位争いに食い込んでくる力は間違いなくありますけどね。それと、個人的にはすみだや浦安が楽しみですね。

浦安の新監督はフットサル界の“熱男”?

──では、今話題に挙がった新監督を擁立したチームはどうでしょうか。金井一哉監督の北海道、小宮山友祐監督の浦安、そして永井義文監督の大阪の3チームですね。

稲葉 北海道は、もともと金井監督がコーチをしていたし、それほど変わらないんじゃないかな?

北原 そうだと思ったんだけど、(水上)玄太に取材したらかなり変わっているということだったんだよね。細かい決まり事をつくっていなかったところから変化があって、違うスタイルを見せられるだろうって。

稲葉 金井監督がFリーグ選抜を指揮した経験を落とし込んでいるのかもね。

北原 そうそう。これまで得意としていたカウンターに加えて、遅攻もトレーニングしているみたい。でも、フットサルを始めたばかりの若手もいるから、発展途上だということらしい。ここ何年も下位が定位置となってしまっていたから、一皮向けた姿を見せられるどうかは注目したいですね。

稲葉 浦安は、選手に話を聞くと「とにかく熱い」と(笑)。

──稲葉さんは小宮山監督とは日本代表でも浦安でも一緒にプレーしてきました。どんなキャラクターですか?

稲葉 一言で闘将だよね。守備と勝ち負けに対してのこだわりがすごいし、感情も表に出すタイプ。とにかく熱い、フットサル界の熱男。アルベルト・リケル監督の下でコーチだった昨シーズンは、そこまで自分の影響力を出せるポジションじゃなかったけど、監督になってからはきっちり自分の色を出し始めている。ミーティングもすごく熱いらしいよ(笑)。嫌な雰囲気ではなくて、すごく熱量があると。

北原 まさにゆうくんらしいね(笑)。

稲葉 そう、だからよかったなと思って。外からの勝手な意見だけど、スマートに戦術を取り入れて、ゆうくんっぽくないフットサルをしてほしくないなと。それでやっぱりディフェンスのことをすごく選手たちに伝えているらしいから期待したいよね。これまでのパス回しをはじめとするうまさに強度が加わればいいチームになると思うから、今シーズンはそのあたりが見どころになるのかなと思います。

──浦安と言えば4人が連動したクワトロ(4-0システム)のイメージですが、スタイルも変わりますか?

稲葉 (元浦安の選手で)セグンドの監督でもある新造(邦明)がコーチなんだけど、彼はクワトロを上手に教えられる。それで、ゆうくん自体はピヴォ当て(3-1システム)が好きで、去年もリケルがかなりピヴォを置いた攻撃をしていたから、2つのシステムがミックスしたものになるんじゃないかと思います。

北原 その話を聞いて、浦安はいいチームになりそうだと感じるね。熱い人間性を持った監督とスペシャリストのコーチが組み合わさることが、いいチームになる条件の一つだと思うから。チームが立ち戻る人間的な部分も大事だし、もちろん戦術的なところも大事だという意味では、新造が戦術を教えて、ゆうくんが「俺についてこい!」と引っ張る形が見もの。実際、昨シーズンの湘南も、スペイン仕込みの戦術に長けた村松(裕樹)コーチと、人間力の高い奥村敬人監督のコンビがハマって終盤に快進撃を見せたからね。

稲葉 滝田(学)が入ったことで守備がさらに安定する。あれ、かなり期待しちゃってるね(笑)。

──では大阪はどうでしょうか?

稲葉 永井監督がどんなフットサルをするかはまだ見ていないからわからないけど、本人はピヴォの選手だったからやっぱり3-1が軸になるんじゃないかな。個々の能力もあるし、選手層は申し分ないと思う。

北原 それに(2016シーズンにリーグ優勝した前々監督の)グレさん(木暮賢一郎)が残したものが多い。その当時に抜擢された若手がどんどん上がってきている。それに加えて、今はサテライトを指揮していた永井監督が手塩にかけて育てた選手も一緒に上がってきているから、うまく融合できれば面白い存在ですよ。

稲葉 (加藤)未渚実や田村(友貴)、堀内(迪弥)とか、日本代表でもある主軸選手がうまくカバーできるかということもあるよね。

北原 それと、監督が若手をうまく使ってあげられるか。目の前の勝ち点3を求めてベテランを酷使して、若手の出場機会を与えられないままチーム全体のモチベが下がることはよくあるからね。ベテランと若手がうまく融合できるか、ベテランが疲弊して若手が勢いを出せなくなるか、その辺にも注目したいです。

──ちなみに、永井監督はどんなキャラクターですか?

北原 真面目だよね。特異なキャラクターを出す一面があるけど、基本的には超がつくほど真面目。代表で一緒だったときは、僕のところにも、これを教えてくださいと言ってノートを持ってきていました(笑)。対戦相手としてのやりづらさがあったけど、ピッチ外ではすごく律儀で仁義を通す人ですね。

稲葉 でも、ふざけられるよね。

北原 そうそう、ふざけ方も独特で、永井ワールドがある。根は真面目なんですけどね。

稲葉 独特なスイッチを持ってるよね。それがオンになると面白い(笑)。

F2からの昇格2チームがF1で大暴れする?

──今シーズンはY.S.C.C.横浜とボルクバレット北九州が昇格してきました。どんな存在になるでしょうか。

北原 横浜は洸太郎が語ってくれるから、北九州から話すと、鍵を握るのはウーゴ・サンチェスだと思う。

稲葉 うまいって感じる選手だよね。F1では久しぶりのスペイン人だけど、スペイン人らしいというか、一人で相手をかわすタイプじゃないけど、馬場(源徳)監督の求めるプレーを体現しながらゲームをつくれる。よく見ていると、相手につかまらないような予備動作だったり、トラップの動かし方だったり、フットサルを知っている選手だなと。人間的にもすごくいいやつで、日本語もかなり話せるようになっています。なぜか関西弁なんですけどね(笑)。

北原 馬場監督とは、スペインのサンティアゴのコーチ時代からの付き合いなんだよね。

稲葉 そうそう。その縁もあるし、彼自身も日本が好きだった。いわゆる助っ人のような振る舞いではなくて、チームに溶け込んでいこうとできるし、そのなかでみんなで頑張ろうと鼓舞できるんだよ。

──そうした玄人好みの選手を見るポイントはどこでしょうか?

北原 せっかくなのでコアな見方をお伝えしたいのですが、その選手がボールをもっていないときの動きがポイントだと思います。特に、ポジション取りとフリーランニング。ポジションは、リスクを避けるような立ち位置なのか、周りを生かすためのものか、自分を生かすためのものかで微妙に変わります。フリーランニングも同じで、周りを生かすためのものか、自分が生きるためのものかで全く違うから面白いですよ。

稲葉 マニアックだけどそこだよね(笑)。パッと見て驚く選手じゃないけど、ものすごく利いている選手。

北原 (フリーランニングで前線に)抜けるときにちょっとブロックに入ってパスコースをつくったり、次に自分が受けるためにどう動くかとか、そういうところが個人的には面白いんだけどね(笑)。

稲葉 ウーゴは、直接ゴールを奪うわけではないけど、ゴールから逆算してその前の前の前のプレーからゴールを演出しているんだよね。いるかいないかでチームの質がかなり変わってくる。俯瞰して見ている感じで、まさにピッチ上の監督みたいだよね。それと(清水)誠也にも注目したい。すみだでは、いろんなピヴォがいるなかでなかなか出場機会を得られなかったけど、北九州に行って自分が軸として出場するようになったことで自信をもってプレーできているし、得点能力はもともとすごく高いからF1でどこまで通用するのか、そのチャレンジを見てみたいな。この前代表に呼ばれた米村(尚也)選手や小林(謙太)選手もいいよね。

北原 昨シーズン実際に戦って感じたのはどんなこと?

稲葉 馬場監督がすごくフットサルを知っている人で、かなり対策されている感じがしたね。横浜の特徴をかなり消されていたし、向こうはすごく意図をもってプレーしてきているようだった。スペインで培ってきたフットサルは、本当にすごいものだと思う。

北原 馬場監督は、スペインで学びたいという日本の指導者をアテンドもしているよね。須賀(雄大)監督も(高橋)健介も馬場さんを頼ってスペインに行っていた。それはつまり、日本人が欲している情報を現地でアサインできるというだし、日本フットサルの現状や必要なものをよく理解しているということ。だから、日本フットサルに必要な情報やノウハウを、スペインからきっちり拾ってきたんだと思う。

稲葉 スペインリーグ1部で数シーズンもコーチを務めた日本人は馬場さん以外にいないし、すごいキャリアだよね。だからこそ、いろんな引き出しをもつ馬場さんが名古屋にどう挑むのかは見どころだよね。本来のスタイルがあったとしても、相手に応じてやり方を変えてくるかもしれないですね。

北原 じゃあ、横浜はどう? F1で戦えそう?

稲葉 うん、戦えるね。ある程度まではいくと思うよ。ただ、フットサルの経験値や試合感は高くないから、そのあたりがどう影響するかな。コロナの自粛期間が明けてからピッチでかなり追い込んでいたし、個の部分も取り組んできたから、強度は武器になると思う。Fリーグだと、だいたい2セット+オプションで回すチームが多いけど、横浜は3セットつくって強度を維持することもできる感じだね。大学サッカーから加入した3人の選手の期待値も高いから、どこまでフットサルに溶け込めるかも楽しみなところです。

北原 すごく期待できそうだ。

稲葉 うん、特にJ3からやってきた2年目の橋本(裕貴)はすごく活躍しているし、どんどんよくなっている。そういう意味でも若手が皮を破っていけば面白いんじゃないかな。前田(佳宏)監督はグループづくりがうまい監督で、ベースをきちんと教えてくれる上で、強度と選手のモチベーションを大事にするタイプ。最低限の戦術を落とし込みながら、余白を残しておいて、選手に決断をうながすような導き方をしているかな。

立川・府中、町田、湘南、長野はどう戦う?

──では、そのほかに注目しているチームはありますか?

稲葉 立川・府中はやっぱり重量感があるし、フットサルを知っている選手が多い印象ですね。ピヴォをメインにした攻撃だけではなくボール回しもできるし、細かく動ける。それと、練習試合を見たけど、若手の堤(優太)選手と多摩大から新加入した南雲(颯太)選手、それに上村(充哉)選手がすごく良いね。代表に選ばれている(皆本)晃や内田(隼太)選手もいて、チーム全体として強度があってボールを持てて、後半に強いと思う。ベテランと若手がそろっていて総合力が高いと思います。コンスタントに勝ち点を取れそう。「ピンキーおじさん」もいるし。徹くん(完山徹一)の髪の色ね(笑)。

北原 まさかピンクにするとはね(笑)。でも、チームのバランスはいいし、上位に食い込む可能性は十分あると思う。個人的には、その安定したところにさらに爆発力を出せたら名古屋に対抗すると思う。

稲葉 フィクソが少ない気もするよね?

北原 そこは、山田・マルコス・勇慈監督が意図的にそういうメンバー構成にしているかどうかだよね。

稲葉 名古屋のペピータとか、大分の小門(勇太)とか、グイグイくる選手に押し込まれて自由を与えてしまうかもしれない。アラ・フィクソは多いから、フィクソとしての強さを出せる選手が育つとかなりいいね。

北原 町田はどうなると思う?

稲葉 昨シーズンの町田はよかったよね。

北原 ルイス・ベルナット監督が若手起用に踏み切って、シーズンを通して若手がコンスタントに活躍したからね。そういう経験が積み重なったシーズンだから注目だよね。もちろん、(森岡)薫や滝田が昨シーズン途中に退団して、レオ(横江怜)や森谷(優太)が引退したことでベテラン層は減ったけど、若手がやりきるという意味では、12チーム中でもっとも期待できるよね。

稲葉 ちなみに、練習試合をみた感じだと多摩大出身の本石(猛裕)選手とか、元自衛官であだ名が「ジエイ」の福田(亮)選手も仕上がっていたね。

北原 多摩大出身の選手はすごくいいよね。

稲葉 うん、横浜に入った安井(嶺芽)とかもそう。監督のアリさん(福角有紘)が大学からFリーグへというすごくいい流れを作ってくれていますね。あと町田は(室田)祐希ね。

──金山友紀選手ですか?

稲葉 いや、室田のほう。彼の出来がチームを左右すると思う。というか、友紀くんはすごすぎるから。もともと、アタッカータイプだった選手が、年齢が上がって後方でゲームをつくるタイプになったりするけど、友紀くんはプレースタイルが変わらないからね。スピードを武器にしたスタイルで、ずっと走り続けている。

北原 俺も洸太郎も、2008年のブラジルW杯に一緒に出たけど、その選手が今もあれだけやっているというのは尋常じゃないこと。ABEMAの中継でいつも話しているけど、本来はプレースタイル的に(年齢が上がることで)生き残れるタイプじゃないんですよ。実際のスピードが衰えているかどうかはわからないけど、走りの質を上げることで活躍し続けているから。

稲葉 経験に基づく予測と、あとは最後に体を張れる勇気がすごいよね。もともと野球をやっていたから、(ゴール前で合わせるプレーなど)速い球にも強いんだと思う。あと、湘南はどうなると思う?

北原 湘南は退団したマルロンと、引退した植松(晃都)、刈込(真人)の穴は大きいと思う。でも、湘南は想いの強さで戦えるチームでもあるよね。本当なら、(引退した中島)孝くんを含めて、チームを離れる選手を全日本選手権で最後に一緒に戦って送り出したかったという想いがあって、そういう感情の強さはキックオフカンファレンスのコメントとかからもすごく感じる。チームの輪があるので今年も期待したいです。

稲葉 そうだね。1セット分の選手が抜けちゃったわけだから、2セットきっちり組めるのかな。事前に見れていないからわからないけど、若く有望な選手はいるから、穴を埋める存在として、F1の強度や試合感、ゲームコントロールできるかが鍵になりそう。町田がそうであるように、試合に絡めていなかった若手が結果を出し始めたら本人も自信になるし、チーム力も間違いなく上がる。ロドリゴを筆頭に個々が乗り出すとすごく強いから、チームとしてどうやって厚みを出していくかというところかもね。

北原 じゃあ、長野はどう?

稲葉 F2で対戦していた2シーズン前からはかなりメンバーは変わったけど、F1初年度の昨シーズンは未勝利に終わって……そこからかなり補強したよね。(荒牧)太郎が締められるかどうかが大きいと思う。他の新加入選手で言えば、(田村)佳翔もツル(丹羽脩人)も使われる側で、太郎が使う側のタイプだから。ゲームをつくる担い手がほとんどいなかったなかでどう構築していくかだよね。

北原 全く見れていないから未知数ではあるけど、太郎がベテランのスパイスを加えられたら、間違いなく面白いチームにはなると思う。ただ、ステージを1つ上げるのは簡単じゃない。根本的なピースが足りていない印象はどうしてもあるから、戦えるメンバーに成長していたらチームが変化すると思う。

稲葉 たとえばツルは面白い存在だと思う。すみだでも一緒にやっていたけど、ボールタッチとかは昔の自分のようなんだよね。すごくテクニックがあるから、のびのびとやれたら爆発しそう。それと、横澤(直樹)監督がどんな戦術を採用するか。ある種の奇策も多いから、そういうものに対応できないと厳しい。選手に経験があれば落とし込めるけど、戦術で頭がいっぱいになってしまうと試合に集中できないからね。

北原 監督は「どん底からF1定着を狙う」と言っていたけど勝てるかな?

稲葉 今年のチームであれば、勝利はできると思うな。

──開幕節は、昨シーズン3回対戦して1-8、1-10、3-10と大敗した名古屋と戦います。

稲葉 ある意味では、そこで日本最高峰の強度を知って、そこを基準にしたトレーニングをシーズン通して続けられるかが重要かもしれないですね。

──Fリーグで経験のある選手が加入しても、簡単ではない?

北原 誤解を恐れずに言うと、ベースでもっているフットサル理解度が高い状態ではないなかで、なかなか強度が上がってこなかった現実があると思います。そうしたなかにFリーグ経験のある新しい選手が加わりましたが、強度が上がらないまま続けてしまうか、そうした選手が「ついて来い」と引き上げられるかどうか。そのあたりで、シーズンを通したチームの成熟度が全く違うものになると思いますね。

──今シーズンは、9月、10月の無観客試合、リモートマッチが決まっています。一方でABEMAが全試合生中継するので、多くの人に見てもらえる環境があります。ファンの皆さんには何を見てもらいたいですか?

北原 これまでは、自分が好きなチームであっても、なかなか全試合見ることは難しかったと思います。でも、今シーズンはそれができる。今シーズンはすべてのチームの成長過程を追うことができるので、ぜひ点ではなく線で見てほしいですね。1つのチームでもリーグ全体でもいいので追いかけてもらいたいです。

稲葉 僕は去年まで選手をしていましたが、引退を決めた理由の一つが、フットサルを別の角度から盛り上げていきたいというものでした。だからこそ、今シーズンはABEMAで解説を担当させてもらえることに感謝していますし、フットサルをみんなに知ってもらい、みんなに楽しんでもらえるようにしたいです。今まで見ていた人はそのまま見続けてもらいつつ、同時に、周りの人にもぜひ観戦を勧めてみてもらいたいですね。

北原 今シーズンはたくさんの新しいお客さんにみてもらいたいですね。

稲葉 そうそう。しかも、会場に観客がいないから、ピッチの音がダイレクトに聞こえると思う。選手の生の声や、監督のベンチの声がけ、選手の振る舞いなど、普段は見れないような一面も楽しめる要素だと思います。好きな選手やチームを見つけてもらったり、フットサルの勉強のために見てもらったり、ぜひ、たくさんの人に見てもらいたいと思います。

■『Fリーグ2020-2021ディビジョン1』 番組概要

9月5日(土) 午後1時55分~ Fリーグ第1節 Y.S.C.C.横浜 vs ペスカドーラ町田
配信URL:

9月5日(土) 午後4時30分~ Fリーグ第1節 バルドラール浦安 vs 立川・府中アスレティックFC
配信URL:

9月5日(土) 午後7時~ Fリーグ第1節 名古屋オーシャンズ vs ボアルース長野
配信URL:

9月6日(日) 午後1時55分~ Fリーグ第1節 ボルクバレット北九州 vs 湘南ベルマーレ
配信URL:

9月6日(日) 午後4時30分~ Fリーグ第1節 シュライカー大阪 vs エスポラーダ北海道
配信URL:

9月6日(日) 午後7時~ Fリーグ第1節 フウガドールすみだ vs バサジィ大分
配信URL:

■ABEMAビデオ
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