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高校年代“サッカーvsフットサル”の現在地。恥も外聞も捨てた名古屋U-18はなぜ、敗れ散ったのか。【U-18選手権コラム】

注目された一戦は、大きく期待を裏切る凡戦になりそうだった。そして、名古屋オーシャンズU-18(東海地域代表)は、試合を凡戦で終わらせなければいけなかった。

第9回全日本U-18フットサル選手権大会・準決勝の藤井学園寒川高校(四国代表地域)と名古屋U-18の試合は、「サッカーチームvsフットサルチーム」という、歴代大会でも見どころとされてきた構図の対戦だった。1次ラウンドの成績を見ると、寒川は3試合を3連勝し、29得点・9失点と今大会随一の圧倒的な攻撃力を示していた。

一方の名古屋U-18は、ペスカドーラ町田U-18とシュライカー大阪U-18というFリーグ下部組織2クラブとスコアレスドローを演じ、1勝2分け、6得点・0失点でグループCを2位で通過した。1次ラウンドでの失点ゼロは大会唯一であり、最強の矛と最強の盾のぶつかり合いとも言える一戦だった。

取材・文=河合拓

Fリーグに進路を取る高校年代のサッカー選手

誤解を恐れずに言えば、9回の積み重ねにおいて、サッカーとフットサルは歩み寄りを見せている。2014年に大会が始まった当初のサッカーチームは、フットサルに関する知識をほとんど持っていなかった。今大会も主審に「ゴールクリアランス!」と声をかけられ戸惑うチームはちらほら見られたが、昨今のABEMAのFリーグ無料中継の影響などもあり、フットサルに対する知識は、この9年という時間でサッカーチームにも浸透していった。

具体的な例を挙げると、今大会でFリーグ下部組織の3クラブと同組になった北海道釧路北陽高校(北海道地域第2代表)が分かりやすい。第2回大会で準優勝した時、このチームのキャプテンを務めていたのは、ペスカドーラ町田の伊藤圭汰だった。伊藤はこの大会に出るまで、Fリーグはもちろん、フットサル日本代表の存在も知らなかった。

しかし、今大会に出場した北海道釧路北陽の選手たちは、Fリーグに進路を取り、フットサル日本代表候補にも選出された“伊藤先輩”のことを知っており、高橋健太監督によれば「自分たちにも同じような道が開けるのではないかと、かなり意識していた」状態だった。

フットサル界に流入し始めたポテンシャル

サッカーチームにとって、フットサルの知識不足が課題だったことに対し、フットサルチームの課題は「アスリート不足」だった。もちろん、選手の数はいたものの高校年代で運動能力の高い選手たちは少数派で、フットサルチームはセットプレーやサインプレー、守備のセオリーなど、専門性を武器に対抗していた。だが、現在はアスリート能力の高い若い選手も、フットサルチームに加入する状況ができつつある。

こちらの例としてわかりやすいのは、名古屋U-18に所属するU-19フットサル日本代表候補のGK物部呂敏だ。物部は、中学生年代までは名古屋グランパスU-15に所属していた。しかし、サッカーのGKとしては、身長が足りなかったこともあり、高校年代からはフットサルをプレーすることを選択し、国内唯一のプロフットサルクラブである名古屋オーシャンズの下部組織の門をたたいた。もちろん、まだまだ例は少ないが、こうしたJリーグの下部組織に入っていてもおかしくないアスリート能力の持ち主が、徐々にフットサルチームでも見られるようになっている。

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