スペシャルコンテンツ Masaya Fantasista Vol.1「スポーツと音楽の幸せな関係」


2020年9月、東京スカイツリーのお膝元に、スポーツクライミングの“聖地”が誕生した。「THE STONE SESSION TOKYO」を全面的にプロデュースしたのがJazzySportだ。
スポーツと音楽の融合を掲げて活動してきたJazzySport主宰のMasaya Fantasista氏はなぜ、スポーツクライミングの世界にどっぷりとハマっていったのか。
「SmartSportsNews」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。

スポーツと音楽には共通点がある

——Jazzy Sportが経営する盛岡のTHE STONE SESSION(以下、TSS)はレコードショップとボルダリングジムが併設された「音楽とスポーツ」という二つのカルチャーが共存する場所ですが、元々こういう形だったのですか?

最初はレコードショップだけでボルダリングは全く関係ありませんでした。ショップの10周年というタイミングで、ジムとショップが併設した今の形にリニューアルしました。でも本当のはじまりはレコードショップではなく、音楽プロダクションとしてスタートしてプロダクションの立ち上げ当初からmitsu the beatsのアルバムなどを制作していました。そこから盛岡にショップができて、次に渋谷店がオープンしました。そこから渋谷店が今の五本木に移転という流れになります。

——レコードショップからボルダリングジム併設の店にリニューアルしようと思ったのはどんなきっかけだったのですか?

盛岡店はJazzy Sport立ち上げメンバーのCHOKUがずっと切り盛りしてきたショップです。それで東日本大震災があったときに色々と思うことがあって、一度店を閉めて盛岡を離れる時期がありました。その震災前に盛岡でCHOKUをボルダリングに誘ったら夫婦で一緒にハマってくれたんですよね。自分たちのジムを作りたいと漠然と思い始めたところで震災が起こりました。

——震災直後、岩手は被害も大きかったですし色々と思うところがあったんでしょうね。

また盛岡に戻ってこれまでと同じようにレコードショップを経営するか考えたときに、彼らの中でなにか引っかかるところがあったんですよね。そのタイミングでちょうどジムをやるのに良い物件が見つかり、震災での心境の変化とボルダリングにハマっていたこと、いろいろなタイミングが重なってTSSにリニューアルという形になりました。

——最初は音楽レーベルからのスタートということですけど、この「Jazzy Sport」というブランド名にはどんな思いが込められているのですか?

ジャジーと聞くと皆さん普段耳にする音楽のジャズをイメージをすると思いますが、僕たちはその音楽性の部分以外でもジャズというものに魅せられていました。その自由さと即興芸術というところ。それはスポーツにも通じると感じていました。そのジャズとスポーツの共通点、繋がりに気がついたときに衝撃を受けたんですよね。まだ20代前半でした。そこでいろいろなことが自分の中で繋がりました。

——いろいろなことが繋がったというのは?

スポーツもルールのもとでフォーメーションやサインプレーなど様々なプレーがありますよね。実際の試合ではその瞬間、瞬間で状況は違うので、そこで個々がベストの判断をしないと成功しません。それはジャズの演奏も同じで、最低限のコードなどのルールがある中で、仲間を尊重して、かつ自分がベストなパフォーマンスをして噛み合うとレベルの高いプレーとか、レベルの高い音が生まれるわけですよね。僕は世の中もそうあるべきだと思っています。各自がそれぞれの個性に応じたベストなハッピーライフを送って、そのうえで他人といかに共鳴していくか。それでグルーヴしていくと全てが気持ちいいわけです。それが僕の好きな音楽とスポーツに込められたメッセージだったと、そう繋がったんですよね。僕はそれをより多くの人に共感してもらいたくて、そういう生き方をしていくというか、発信し続けていきたいと思っています。

——二つの共通点から生き方のメッセージに繋がったわけですね。

名前の由来にはKEN SPORT(ケン・スポート)というDJの存在も潜在的に影響していたと思います。90年代にニューヨークでかっこいいミックステープをいくつも出していました。僕はもう彼のMIX TAPEの虜でした。当時はPOLO SPORTも流行していたので、彼はそこから付けたんだと思いますが(笑) 尊由来は他にもあります。そもそもSPORT(スポート)とはなんなのか。その意味を調べたら「見返りを求めず物事を追及する」という動詞的な意味が含まれていたんです。まさにその通りだなと思いました。

——SPORTの言葉の意味に注目したことはなかったですね。

スポーティであることは別に速く走れということではないんです。例えばチームスポーツは勝利に向かってチームがベストなパフォーマンスになるように個がベストを尽くす。個人種目でも選手を支えるスタッフと共鳴しないと勝てません。そう考えると、より良い世の中を未来へバトンタッチするべきだというのは、世界のどんな人でも理解できると僕は信じていますので、みんながそれを地球というチームの目標として生きていけば、もう少し良い世の中になると思うし、世の中もその方向に動いていると感じているんです。そういう思いがJazzy Sportには込められています。

スポーツはずっと大好きだった

——masayaさんのように音楽とスポーツを好きな人はいると思うんですが、そのうちどこかで分岐する傾向にあると思うんです。俺は音楽の方を本気でやるとか、俺はスポーツの方とか。Masayaさんはずっとどちらも続けてきたのですか?

確かにそうかもしれないですね。ただ、レーベルを立ち上げて仕事としてやってきたので、音楽のほうが真面目にやってきたと思います。音楽で食べていく、スポーツで食べていくという感覚はあまりないですね。どちらかの選択を迫られたこともないです。でもスポーツをやることで確実に音楽と向き合う時間は減ったとは思います。それはどうなのかなと客観視してみることもありました。でもそれが僕で、それで僕はハッピーなんですよね。

——今は音楽とスポーツはどのようなかかわり方ですか?

音楽はドラムを趣味で叩くくらいですね。自分で音楽を作るという行為は長いことしていなくて、音楽プロダクションとしてかかわっているという感じですね。

——スポーツとのかかわりは?

小学生向けのグローバルエリート(短期集中型のサッカーキャンプ)はずっと継続してやっていて、クライミングもジムやコンペのDJでかかわっています。自分自身も現役で東京都のシニアリーグでサッカーもしています。スキーはヴィクターグライドという国産ブランドと共にスキーカルチャーへの関わりをずっと続けていますね。

——今聞いただけでもいろいろスポーツにかかわっていますけど、masayaさん自身のこれまでのスポーツの遍歴は?

いろいろなスポーツをやってきましたね。逆に一つのスポーツでプロを目指してやってきませんでした。テニス部なのにバスケもよくやっていたし、高校になったらバスケ部に入っていたけど、サッカーも同じように好きでしたし。テニスをやっていたから卓球とか野球をやってもすぐ打てるようなったり、バレーボールも得意でしたよ。

——スキーもやられていたんですよね?

スキーも昔から親に連れてってもらっていたので好きですね。それで思いっきりスキーがしたくて盛岡の大学に進学しました。でも競技としてはやっていませんでしたね。そうやって10歳から17歳くらいまで一つの種目だけでなく、いろいろことをやってきました。アメリカはそれが普通だったりしますが、いろんなスポーツをやってきたのは自分にとってすごく良かったと思っています。

——音楽のルーツはどんなところにありますか?

子どもの頃からピアノをやっていたこともあって昔から音楽は好きです。両親がジャズ好きだったり、4つ上の兄の影響も受けたり、いろいろ音楽が身近にあった環境で育ってきました。中学になるとストリートダンスブームが起こり、そこからブラックミュージックをよく聴くようになりましたね。それで親が聴いていたジャズの中にヒップホップのサンブリングソースがあったんです。その頃はサンプリングというものをよく知らなくて、先輩に聞いたら「それがサンプリングされた元ネタってやつだよ」と教えてくれたんですよ。ヒップホップがそんな作られ方をされているんだと知ってからはもう夢中でしたね。基本的にはブラックミュージックが好きですけど、サンプリングを紐解くところから入ったので必ずしもそれだけではなくいろんな音楽を聴いてきました。

——音楽とスポーツで好みの共通点を感じることはありますか?

サッカーでも昔からジョージ・ウェアやサンデー・オリセー、オコチャなど、魅せられてきたのはみんなアフリカンの選手でした。彼らの独特なリズムや躍動感、スピード感に自分が好きなブラックミュージックと共通するものを感じて、こんなところでも繋がるだなと思うと本当に面白いですよね。

Vol.2「俺がスポーツ大会でDJをやる理由」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/5fae52e9d5c61b69d64126e3b

Vol.3「スポーツを自由に楽しめる空間をつくる」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/5fae545333b843697d50d712

■プロフィール

Masaya Fantasista
1977年生まれ。神奈川県横須賀市出身。幼少のころに始めたピアノで音楽に目覚め、両親の影響でジャズ、その後はヒップホップなど、あらゆる音楽に没頭する。2001年に音楽とスポーツの力を信じて疑わない女性に優しいハードコア集団「Jazzy Sport」を設立。アーティストのプロデュースや音楽イベントを開催する傍ら、スキーブランドVector Glideとのコラボツアーやクライミング日本選手権でのDJ活動等、 山岳スポーツシーンの振興にも力を注ぐ。

LATTEST SPORTS
JazzySportプロデュースのボルダリングジム” THE STONE SESSION TOKYO “、サイクルショップ、自家焙煎の本格派コーヒースタンド、遊び砂場など、大人から子どもまで楽しめるスポーツ複合施設が登場。音楽やアートの大規模カルチャーイベントも開催。

https://www.instagram.com/lattestsports

■クレジット

取材・構成:Smart Sports News 編集部

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